ロイヤル・バレエ 「コッペリア」 10/25
音楽: レオ・ドリーブ
台本: シャルル・ニュイッテル、アルチュール・サン=レオン (原作:E.T.Aホフマン「砂男」)
振付: ニネット・ドゥ・ヴァロワ (レフ・イワノフとエンリコ・チェケッティの版に基づく)
デザイン: オズバート・ランカスター
ドゥ・ヴァロワ版初演: 1954年3月/再演: 2000年2月

キャスト

スワニルダ: 吉田都
フランツ: フェデリコ・ボネッリ
コッペリウス: アラスター・マリオット

スワニルダの女友達: ヴィクトリア・ヒューイット、アイオナ・ルーツ、ナターシャ・オウトレッド、サマンサ・レーン、クリスティナ・エリダ・サレルノ、ジェンマ・サイクス
農民達(マズルカのリード): フランセスカ・フィルピ、小林ひかる、スティーヴン・マクレー、ベネット・ガートサイド
チャルダッシュのリード: ジリアン・レヴィ、フェデリコ・ボネッリ
曙: ローラ・モレラ
祈り: フランセスカ・フィルピ
 

「音楽の贈り物」

コッペリア3幕のフィナーレ、軽快なギャロップにのって出演者全員が踊る大団円のシーン。ひたひたと押し寄せる多幸感と高揚感に包まれながら、なんて素晴らしい音楽の贈り物だろう・・・と感嘆せざるを得なかった。ダンサー達がこれほど生命力溢れる見事なダンスを見せてくれるのは、この音楽で踊ることが純粋に喜びそのものだからに違いない。オケもまた然り。彼らにとっても、この音楽を奏でることが快感以外の何ものでもないに違いない・・・ そんな想像がほとんど確信にかわるくらいの、圧倒的な音楽の力。

コッペリアというバレエには、これ!という極めつけのハイライト・シーンがない・・・見せ場が多すぎるから。舞踊の展示場とでも呼びたくなるような、次から次に披露される多様なスタイルのダンス。クラシック・バレエ、マズルカ、チャルダッシュ、ボレロ、ジーグ・・・まさにダンスの洪水。全幕中どのダンスシーンを切り取ってもそれ自体で完結しうる質の高さだけれど、これもドリーブの魅力的な音楽があればこそ。序曲からフィナーレに至るまで徹頭徹尾並外れたプロフェッショナリズムとサービス精神に貫かれた、ひたすら振付と観客に奉仕することを念頭に置いて書かれたかのような、夢のようなスコア。(これが彼の「全幕」バレエ処女作だったというのがどうにも信じられない・・・・完成度が高すぎる!)

物語は東欧のとある小さな町(村?)が舞台で、登場人物は平民・農民・・・という設定ではあるけれど、音楽が発露するものは、あくまでフランス風(あるいはパリ風)の粋。軽妙洒脱、洗練、抜群の色彩感覚、明晰さ・・・情よりも理知に勝るとでもいうか・・・例えば、この作品の中にはバレエ音楽の中でも最も甘美な旋律がいくつか登場するけれど、決して甘すぎず・感傷性に流されることはない・・・。(ドリーブがコンセルヴァトワール出身のパリの作曲家だったことを考えれば不思議はないけれど。)

勿論どれだけ音楽が優れていようとそれを生かすも殺すも、結局はプロダクション次第・ダンサー(究極的には主役のバレリーナ)次第。1898年・ぎりぎり19世紀生まれのドゥ・ヴァロワの手になるロイヤル版は、演出からデザイン・衣装に至るまで過ぎし時代のイノセントな気分を保ち、音楽の軽妙な魅力に忠実。全編通じてトーンは常にシンプルで率直・明朗、踊りの素晴らしさそれ自体を堪能するにはうってつけ。

肝心のダンサーは・・・といえば、幸いなことにこのバレエ団には吉田都がいる。この作品を知り尽くした彼女のスワニルダは、踊りも演技も聡明で機知に富んでいて・・・この音楽そのもの。二幕までのお転婆な普通の女の子の顔から、三幕で純白のクラシックチュチュに身を包むやすっかりバレエのプリンセスに変身する姿、そしてgpddでのあたりを払うプリマ・バレリーナの威厳にただただ感動・・・

フランツ役のフェデリコ・ボネッリは、見るたびに着実に成長している、いまやロイヤル屈指のオール・ラウンダー。端正なラインと清潔感溢れる演技で、チャーミングな若者の役がぴったり。そしてそして、キャラクター・ダンスでのコール・ド・バレエの充実ぶりは、近年出色の出来!ブーツのかかとを威勢よく鳴らしながらアンサンブルが一糸乱れず踊る迫力のシーン、今も目の前に甦る・・・。
2006-11-05 08:37 | ロイヤル・バレエ | Comment(2)
Comment
この夜、本当はサドラーズでバーミンガムを観ているはずでした。でも、吉田さんの初日を観たらいてもたってもいられず、ロイヤルを選びました。後悔どころか、自分の選択は正しかった、と。吉田さんだけでなく、カンパニー全体が素晴らしかったですよね。
 ただ、空席があまりにも多かったのには、驚きました。いわゆる古典と違って、ロンドンといえども、「コッペリア」はあまり馴染みが無い作品なのかな、と考えてしまいました。
守屋 2006/11/06(月) 06:52:47) 編集

そうだったのですかー 本当に正しい選択をされましたね!素晴らしい舞台を見せてもらってすっかり満足して、思わずこの国のtaxpayerとして誇らしい気分になってしまった私です~。
Naoko S 2006/11/07(火) 08:26:10) 編集

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