パリ・オペラ座バレエ 「椿姫」
週末駆け足で「椿姫」最終回を見てきました。9月30日のソワレ公演、ガルニエ宮にて。

キャスト

マルグリット: クレールマリ・オスタ
アルマン・デュバル: マチュー・ガニオ

アルマンの父: カデ・ブラルビ
マノン: イサベル・シャラヴォラ
デ・グリュ: クリストフ・デュケーヌ
プルダンス: ノルウェン・ダニエル
ガストン子爵: カール・パケット
オランピア: ミリアム・ウルド-ブラム
N伯: アドリアン・ボデ
公爵: ローラン・ノヴィ

昨シーズンからパリオペのレパートリーに入ったノイマイヤーの椿姫、7月に非常に視界の悪い席で一度だけ見た(主役はルテステュとゲストのイリ・ブベニチェク)。今回再見した印象は前回とほとんど変わらず・・・・大変ファッショナブルで美しく、おそろしく空虚なバレエ作品。(ショパンのピアノ曲がこれほど装飾的に聴こえたこともなく・・・)自分にはノイマイヤー作品を受容する感性が極度に欠けている・・・と充分自覚してるつもりだけど、それにしてもこのいいようのない虚しさと違和感は一体どこから来るのか・・・

まあおそらくノイマイヤー=振付以前にこの物語自体に共感できないせいも多分にあると思うけれど・・・しかし、それにしても。二組のマルグリットとアルマンを見て、同じように最も混乱したのは、主人公二人の関係が随分と美化されてあたかも純愛物語かのように見せている演出。これにはどうしても違和感が拭えず。私的にはこのドラマを突き動かしているのはそもそも「愛」というより「情欲」ではないのか?と思えてしまうので。そう、モニカ・ルインスキーのあれですよ(とんでもないたとえではありますが!クリントン元大統領との情事について後年インタビューで「あれはloveだったのか lustだったのか?」とズバリ訊かれて、彼女”lust”と答えてたんですよね。この作品見てこんな俗な話を思い出す自分に呆れもするが・・・)アルマン・デュバルという青年の取る行動、あれは真に人を愛する人間のすることじゃないでしょう。稚拙で恋に恋する子供の行動ですよ(愛ゆえに人は盲目になる・・・という擁護論もあるかもしれないけど、個人的には却下したいですな。あれを愛と呼ばれては・・・)。それがまるで、これはアヴェラールとエロイーズ*か?と錯覚するような、禁断の恋に落ちた恋人達の悲劇・・・であるかのような演出。

(*この二人の名前を出したのはあくまで象徴的な意味<坊さんと尼さんの恋>ですから・・・アヴェラールとエロイーズの実話をもとにバレエを創ったら椿姫よりはるかに情熱的でパワフルな作品になること間違いなし!)

マルグリットを踊ったクレールマリには官能性が欠けていてかつ表現がハードだったので、別れの時がくると知りながら肉欲に溺れる人間の弱さや切なさが伝わってこない。(ただアニエスも官能的とは言い難い役作り&表現だったのでこれはやはり振付家の意図するところか。多分パリオペで最も「リアルな」マルグリットを演じられるのは劇中劇のマノン役がはまっていたイザベルじゃないかと思うんだけど、彼女が踊ると作品世界が途端にマクミランのものになっちゃう気もするのでそれはやっぱりまずいのかな・・・)で、猥雑さも含めてちらちらと挿入される作品の重要な「本質」部分・セクシャルな部分をほぼ一手に引き受けていた・・・ように見えたのがガストン子爵。カール演じるガストン子爵はそこのところ逃げずにストレートに表現してました(えらい)。でも、どうにもおさまりが悪いなあ やっぱり・・・ 何かね 素直じゃないというか とても大事な核心部分が脇にそらされて、結果として主人公二人の内面のドラマが迫ってこない。何か寒々しいものを感じてしまったのよね・・・ 

私の目には振付家の共感はマルグリットよりもアルマンに寄せられていて、彼が物語の語り部でもある・・・これはアルマンの物語。毒気を抜いて浮世離れした虚構の「愛」の世界で無思慮な恋人を演じるのに、マチューほど適役のダンサーもいないでしょう・・・彼のアルマンは説得力あることこの上なかったです。分別ある大人でありすぎたイリは「普通に」恋する男で、そもそもそこにひっかかってしまったけど、マチューを見ていたら、アルマンというのは世の中のことなんて何も知らない・恋に恋する子供なのね、とすんなり納得。そして、アルマンが恋焦がれたのは自分の頭の中で作り上げた理想の女性像としてのマルグリットだった・・・と感じられて、これで自分の中でかなり消化不良だった部分が解消されました。(マチューのアルマンはまるで疑いの無い、崇拝のこもった無邪気な瞳でマルグリットを見つめるんだけれど、そのあまりの無防備さと憧れのこもった眼差しに、彼が見ているのはマルグリットという生身の女ではないのね・・・と気づかされた。)

この稿続く(多分・・・)
2006-10-03 09:35 | パリ・オペラ座バレエ | Comment(3)
Comment
Naoko Sさん、お久しぶりです。そしてお邪魔しま~す。「椿姫」レポ、興味深く拝見しました。私は残念ながら観ることはできず、ニュース番組のHPや雑誌の記事、そしてデュマ・フィスの原作で想像するしかなかったのですが、原作を読んで、やはりアルマンって子供だな~、マルグリットのような玄人に恋するなんて100年早い!などと思ってしまいました。はっきりいっていやなタイプのオトコ(爆)。Naoko Sさんのおっしゃるとおり、「恋に恋してる」感に充ち満ちているのですわ。墓暴きもなんだか子供がおもちゃをなくしてそれをまた買って~とだだをこねているみたいで。でも、さまざまなペアの舞台写真を見ると、振り付けはもしかしたら、原作に真実性を与えるのだろうか、それを確かめるために、いつか生の舞台を観てみたいな~とも思うのです。
 
Bera 2006/10/04(水) 21:28:09) 編集

Naoko Sさん、無事にマチュー@アルマンをご覧になれたのですね。当日ずいぶん並ばれたのですか&良いお席手に入れられましたか?

私は、ノイマイヤーの作品を「眠り~」、「シルヴィア」、「くるみ~」と観てどれもとても気に入ったのですが、「椿姫」はどういうわけか、観終わって手放しで「すごい良かったー♪」という気持ちにはなれない作品だったんですよね。期待していただけに、自分でも不思議なのですが。この作品、すごく主役2人の力に寄るところが大きい気がします。あと、Beraさんもおっしゃるように、やっぱり原作のアルマンって本当に子供ですよねー。そして嫌なヤツだな、と私も思いました(笑)。
はなはな 2006/10/04(水) 23:34:09) 編集

Beraさん

わ~お久しぶりです お元気でしたか?お越し下さって嬉しいですわ~。アルマンは「いやなタイプの男」ですか~ 確かにあまり近寄りたくないタイプかも(笑)。まあこれはあくまでバレエ作品で美しいバレエ・ダンサーたちが踊っているから全然イヤな奴にはならないですが。「恋に恋する」って実感できたのはマチューの功績ですね。若さゆえの愚かさと純粋さがもう、ほんとにリアルに感じられて。それにしてもマチュー、想像以上の、ちょっと尋常ならざる美しさでしたよ・・・

この作品、きっとパリでは長く愛されてレパートリーに残るのではないかという気がします。そう遠くない将来、舞台をご覧になれますように。


はなはなさん

お陰様で、現地の方から事前にチケットを譲って頂き並ばずにすみました。(行く前にそれこそ毎日電話しましたがリターンは全く出ず・・・すごい人気!)できれば、あのオケピに張り出した舞台の延長戦上にあるオーケストラ最前列でまどろむマチューを見たかったですが、あの席を取った人は死んでも手離しませんよね(笑)。舞台に近くはなかったけれど、全体がよく見えてすっごく安いおトクな席で見ることができました。

「眠り」はハンブルク・バレエの来日公演ですごく評判がよかったですよね?色々な所でレビューを目にして、一度見てみたいなあ・・・と思った記憶が。(ロンドンにいて見られる可能性はかぎりなくゼロに等しいですが・・・)
Naoko S 2006/10/05(木) 06:27:47) 編集

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