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2005/2006シーズンを振り返って(3) 「白鳥の湖」
私が昨シーズンの「役デビュー・最優秀賞」を進呈したくなったのはこの人、オレリー・デュポンのオデット/オディール。実に久しぶりに見る、真っ直ぐに古典の王道をいく正統派の白鳥でした。舞台の幕が下りた瞬間、思わず、「オレリーが次世代のプラテルにならないと誰が言えようか・・・」と心中密かに呟いてしまったほど。

2005年12月~06年1月に鑑賞したヌレエフ版・白鳥の湖のレポ、ル・パルクと同じく初出はKARENさんが以前運営なさっていたBalletForumです。
1.パリ・オペラ座 「白鳥の湖」2005年12月27日

<キャスト>

オデット/オディール: スヴェトラーナ・ザハロワ
ジークフリート: ニコラ・ル・リッシュ
ウォルフガング/ロットバルト: ローラン・イレール
トロワ: ロランス・ラフォン、ミリアム・ウルドブラム、マロリー・ゴディオン


12月27日の公演を見て戻ってきたところです。イレールのロットバルトを無事に見ることが出来たのは有難い限りでしたが、バール王子を見るのを楽しみにしていた私としては彼の降板はショックでした・・・でも、今にして思うと、ニコラとザハロワの組み合わせ!?という超レアものを見られたのはラッキーだったかもしれません。

何しろヌレエフ版を見ること自体が初めてなので、色々面白いことに気づきましたが、第一印象は、ちょっと困ったなぁ・・・という要素が随所に目に付いてしまうプロダクションでした。何度か見るうちに慣れて気にならなくなる部分がほとんどだろうと楽観していますが、結構根本的で厳しいなあ・・・と途方にくれる部分もありました・・・

一幕のニコラはあまり元気がないように見えたのですが、急遽初日が早まったせいだったのかな?この版の性格上の役作りなのか、なんともふにゃ~としたダメダメ王子で、私的には拍子抜けしてしまいました。ニコラ・ル・リッシュは必ずしも古典の型の美しさで魅せる、というタイプのダンサーではない(彼の魅力はそういうところにはない)と思うのですが、もう少し王子のヴァリエーションでは踊り/振付自体の美しさを堪能させてもらいたかった、と贅沢を言いたくなりました。前半、なんとなくフォーカスが定まっていない踊りと演技、という印象が残っています。(演技面に関して言えば、これもあくまで役作りの一環だったのかもしれませんが・・・)

対するザハロワ、いやはや充実していましたねえ・・・白鳥湖のシーンでは気持ちがしっかり入っていて集中力が凄く、こうなると、彼女は無敵。好みの問題はあるにせよ、最大公約数的な白鳥の舞台・バレリーナ像というものが仮にこの世に存在するとしたら、この夜のザハロワはまさにそれを提供していました。恵まれた肢体とワガノワ・スクール産の歌うような上半身の動きは、白鳥に姿を変えられた乙女そのもの。また、この夜つくづくと感心させられたのは、彼女の並外れたコントロール力です。この若さにしてこの完成度は、ちょっと異常なことではないでしょうか・・・ しつこいようですが、好き嫌いは別として、この夜のザハロワは文句のつけようがない堂々たるスワン・クイーンで、ニコラすらちょっと圧倒されているようにも見えました。(それにしても、見ている間は、うーーむとひたすら感心させられるのですが、私的には全く後に残らないんですよね彼女の舞台は。一種痛快・爽快と言えるかも!)

で、イレールです。一幕、「この人、<影の>主役よね?」(私的には、カッコ抜きでシンプルに『主役』!)と思わず納得の存在感。刺繍を施した重厚でダークな色の織物のローブに革のブーツ姿が麗しい・・・ちょっとエキゾチックな、東方の貴人のようでした。ティボルトの時もそうでしたが、辺りを払う威厳と立ち居振る舞いの美しさ。ただティボルトの時ほど突出して周囲から浮いている・・・という感じはありませんでしたが(抑え気味だったのかも・・・笑 実は、イレールばっかり見ていたので、ニコラがどうの・・・とかいう資格はない私です はい・汗)。一幕の家庭教師役(ウォルフガング)の時は動きが少ないのですが、驚いたことに、このヴァージョンは舞踏会のシーンが通常のpddではなく、ほとんどpdtなのですね!主役二人にここまでロットバルトが絡むとは思いもせず嬉しい誤算。おまけにロットバルトのヴァリエーションまである~~!(狂喜!!) ヌレエフが自分が踊ることを想定して創ったせいか?ザンレールの連続とか高速のマネージュが盛り込まれていて、久しぶりにイレールの切れ味鋭いカミソリのような美技を見ることができて、感無量・・・・心の中で、もっと踊って~~~と叫んでいた私です。彼が短いヴァリエーションを疾風のように駆け抜けると、すごい拍手、それに奮起したようにニコラも息を吹き返したか?ここのソロ・ヴァリはよかったです。そしてザハロワもノリノリで、6オクロックを連発するきらいはありましたが、舞台を盛り上げようという熱っぽさがびんびん伝わってきました。ザハロワとイレールは過去に共演しているので、踊りの息も合っていて、ロットバルトがオディールを披露する、プロムナードのシーンなどばっちり決まって見応えがあり、しっかり古典の「型の美」を見せてくれました。

さて、今回初めて見たヌレエフ版、色々と発見がありましたが、その中でどうしても消化できなかった点がいくつか・・・皆さんはどのようにご覧になったでしょうか?

その1. 2幕のオデットの出のシーン、音楽が数小節?カットされてる!

私的にはこの作品の中でも「ツボ」シーンの一つなので・・・白鳥が、いよいよ、登場!というその瞬間までしっかり気を持たせて引き伸ばしてほしいので、オデットがなんとなくあっという間に登場してしまうこの演出は嫌!

その2. これまた2幕の白鳥湖のシーンのセット!

この版は「全ては王子の頭の中の出来事」(ヌレエフ財団サイトの解説による)という前提なのでその意味では理にかなっているけれど、白鳥湖のシーンに「枠」があるのは違和感が拭えず・・・(基本的に全幕舞台は王宮のゴシックの柱に取り囲まれていますね)。王子の実在と心の領域をあらわしているのでしょうけれど、特に白鳥たちが後方の階段を駆け下りたりするのはどうにもシラけてしまいます・・・叙情性と神秘性がうすれてしまうような。(ヌレエフ財団サイトによると、デザイナーのEzio Frigerioはこの点ヌレエフから明確な指示を受けたようです・・・一種「牢獄」のように囲われた空間を造ってほしい、と。)

その3. またしても2幕、四羽の白鳥!

ええとここではパ・ド・シャが「猫」ならぬ「馬」のギャロップのように威勢がいいのに目がテンになってしまいました。これはフレンチ・スクールの流儀なのでしょうか??

その4. 王子を主役に据えた設定

これは好みの問題でしょうけれど、私的には白鳥の湖は断然オデット(オディール)を踊るバレリーナのもの!どうも私の目には王子を中心に物語を進行させていることによる破綻があちこち目についてしまったような。最たるものは、やはり、この物語を王子の逃避からくる夢の中の出来事としている点(この点どこからどこまでが夢か、その境界線は故意にぼかしているように見えましたが)。所詮王子の妄想が生んだ白昼夢だった・・・というのでは最初から御伽噺の要素を拒絶しているわけですが、それは私的にはバツ。この作品の醍醐味は、普通に考えればありえない御伽噺を、もしかしたらそんなことがあるかもしれない・・・と観客に<オデットが>どこまで信じさせることができるかどうかにあると思っているので・・・(今も昔も人間には理屈では説明できない神秘的な超自然現象にひかれる部分がありますよね。そういう心性に訴えかけてくる作品だと思うのです) 


2.パリ・オペラ座「白鳥の湖」2006年1月6、7日

<キャスト>

1月6日
オデット/オディール: アニエス・ルテステュ
ジークフリート: ニコラ・ル・リッシュ
ウォルフガング/ロットバルト: カール・パケット
トロワ: メラニー・ユレル、ファニー・フィアット、マロリー・ゴティオン

1月7日
オデット/オディール: オレリー・デュポン
ジークフリート: マチュー・ガニオ
ウォルフガング/ロットバルト: ステファン・ブイヨン
トロワ: ノルウェン・ダニール、メラニー・ユレル、クリストフ・デュケンヌ



まずは6日。現在のパリオペを代表するアニエスの白鳥をようやく見ることができました。オデット・オディールともとってもフェミニンで人間的というのか、まずは女性としての魅力に溢れていて、この白鳥がパリのバレエファンから愛されている理由が非常によくわかる気がしました。ただ、私には心に響いてくるものがなくて・・・全体にすーっと流れてしまう印象というか、とてもプロフェッショナルかつ丁寧な踊りで好感は持てたのですが。そしてニコラ、幕が開く前は配役表に名前があったものの彼が踊るのかどうか半信半疑でしたが無事登場。(彼はなんと1月3,4日と連続登板で中一日で本当にまた踊るの?と疑問だったのです)相手役がアニエスだったせいか?12月27日よりは踊りも演技もずっと引き締まって「しゃん」として見えました。髪型もかわっていたような・・・・(横わけでなでつけていました。27日はちょっとぐしゃっと寝癖がついたままみたいなヘアスタイルだった) ニコラはやはりアダージョよりアレグロ・タイプのダンサーでしょうか この夜も3幕のpddのソロヴァリがよかった。ジャンプの高さと迫力、男性ダンサーならではの技で見せる他の誰にもない力強い魅力はこの人ならでは!カールのロットバルトは前評判の良さ(見た人誰もが絶賛!)に期待が大きすぎたか?・・・というよりイレールをこの役で見てしまったがために他のダンサーでは満足できないという病気がぶり返し、あまり強く印象に残らず・・・・。3幕のソロ・ヴァリで技にキレがなかったのも残念でした。7日のブイヨンを見たときも思いましたが、ヌレエフ版では重要な位置を占めているこの役、やはり重量感あるベテランのダンサーで見たかった。王子のメンターだし心理的圧迫者でもあるのだから王子よりステージプレゼンスが「軽く」見えては困る・・・(しかし、カールに関していえばたまたまこの日低調だったということかもしれません 疲れがピークに達していてもおかしくない。彼はこの頃なんとほとんど毎日舞台に上がっていたのですよ・・・降板した先輩エトワールの穴を埋めるロットバルト役に加え、7日にはスペインで登場!労働量では間違いなく今回の白鳥、貢献度No.1でしょう。)

えー 実は6日の公演で私が一番嬉しかった&印象に残っているのはトロワを踊ったファニー・フィアットでした。彼女のクラシックはやはり素晴らしい!あの的確な音の取り方、四肢をふうわりと宙に投げ出す時の独特のやわらかさに恍惚とさせられました。いやはや実に、実に素晴らしいダンサーです。もっと彼女を古典のソリスト役で見たい!(ガムザッティ役の代役候補という噂を聞きましたが、是非実現してほしい!)

で、翌日。マチューのジークフリート・デビューがお目当てでしたが、な、なんと私はオレリーのオデットにKOされてしまいました!!

昨夏のグループ公演で垣間見たオレリーの白鳥は、「工事中」というか、準備万端整う前に出てきてしまった・・・という印象があったもので、今回も実はどうかな・・・と若干不安だったのですが、まさかこれほどいい意味で裏切られるとは・・・。オレリーのオデットはきわめて正統派、その意味でここ数年に私が見ることのできた数々の白鳥の中でも最も満足のいく白鳥でした。(正確に言うとオデットにこれほど感動させてもらえたのは97年夏にロパートキナの白鳥を見て以来です)

何をもって「正統派」とみなすかは意見の分かれるところと思いますが、某CMの表現を借りると、「何も足さない・何も引かない」・・・過不足のない、無駄と虚飾のない表現、といいましょうか。オレリーが音楽性豊かなダンサーであることは常々感じていましたが、この夜は、一心にこの音楽を踊りで表現することに集中していたように見えました・・・音楽への専心。白鳥の湖のように音楽の力がこれほど強く、芸術性の高いバレエ作品ではこのアプローチは当然至極のように思えますが、残念ながら最近では滅多に遭遇することはできません。白鳥湖のシーンでは神秘的でメランコリックな音楽にインスピレーションを受けて、オレリーが手探りでこのバレエの本質(核心)を掴もうとしているようにも見えて、その過程で無意識のうちにでしょうけれど、彼女自身の本質が露わにされたようにも見えました。一言で言うと、Beraさんもお書きになっていますが、「とても意思的」。精神性、というのとはちょっと違うけれど、オレリー自身がオデットという役に明確な自分なりの造形をしてそれを確信をもって提示している潔さ、エスプリが透けて見えるような。時として舞台の上に見えているのは彼女の意思そのものではないか、と錯覚させられるような、まっすぐで毅然とした意思の強さ。私はこういうことのできるダンサーに滅法弱いので、見ていてもう感涙状態でした・・・

そして、これまたBeraさんがグラン・アダージョのオレリーについて、「これほど形態の美しさで見せることができるダンサーだったか?」とお書きになっていますが、まさにここがポイントですよね。この白鳥湖のシーンの叙情性と神秘性はクラシックの規範に忠実な、型の美でのみ表現される、と信じている私のような観客にとってここでのオレリーは理想にかなり近いオデット。例えばオレリーのアラベスク、すっと端然としたポーズが音に吸い付くようにぴったりと決まり、上げた脚の角度から前方に倒した腕の手首の降ろし方から、すべてが規範通りで、このアラベスクが表現しようとすること以外(余計なこと)は一切語らない。そして彼女の表現・・・顔の表情はあまり大きくかわらないけれど、控えめで抑えた表現だからこそ、オデットの悲劇性をより強く感じさせていたし、何よりオレリーの凛とした美しさが役の透明感を高めていたと思います。

彼女のオディールは、拍子抜けするほど明るい悪女でした。登場のシーンから高笑い、というよりケラケラと愉快そうに笑っているような・・・テクニックは勿論磐石で、周囲の注目を集めて踊りを披露し、王子をたぶらかすのが楽しくてたまらない、と心から楽しんで踊っているように見えました。表情にはいたずらっ子のような顔も垣間見えてファム・ファタールというよりは少女の面影が色濃く残る、そんなオディールでした。

さて「肝心」のマチューですが、この夜は初役・初日の緊張感にちょっと負けてしまっていたように見えました。ソロ・ヴァリでは精彩を欠いていたし(特にピルエットの着地がことごとく綺麗に決まっていなくて・・・翌日からバレエマスターに猛特訓を受けて、その後2回の公演では向上していた・・・となっていたことを祈ります)、スタミナが続かず、3幕の舞踏会のシーンでは踊るのがやっとで表情に余裕がなかったような・・・。マチューはどちらかというとアダージョのダンサーかな?(なんて決め付けるのは10年早い、と言われそうですが) 2幕の白鳥湖のシーン、オレリーが登場してからのデュエットでは彼の持つ美しいラインとロマンティックな美質が発揮されてなかなかよかったですが。(オレリーとのパートナーシップは初日とは思えないほどよかったです とても美しいペアでした・・・)尚、この夜ソロの踊りでは今ひとつだったものの、サポートはほぼ満点の出来。この若さにして、マチューのサポート力は本当に素晴らしい・・・2幕でオレリーがあれほど自由に踊ることができたのは、多少なりとも彼の手堅いサポート体制があったお陰といえるかも。

で、この夜の私の疑問: これだけあらゆる美質と才能に恵まれたマチューのようなダンサーが、どうしてこんなにガチガチに緊張するの?もっと自信満々でもいいのに・・・(爆・笑ってください・・・)

英文フル・レビュー:

http://www.ballet.co.uk/magazines/yr_06/jan06/ns_rev_pob_0106.htm

(end of Part 3)
2006-09-19 06:30 | パリ・オペラ座バレエ | Comment(0)
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