■ミハイロフスキー・バレエ 「ジゼル」 (7/26・マチネ)
《CAST》
Giselle: Oksana Shestakova
Albrecht: Mikhail Sivakov
Berthe: Yanina Kuznetsova
Prince of Courland: Andrey Bregvadze
Bathilde: Alena Videnina
Game-keeper: Anton Chesnokov
The Duke's squire: Roman Petukhov
Pas de deux: Anastasya Lomachenkova, Anton Ploom
Myrthe: Irina Koshleva
Wilis: Sabina Yapparova, Anastasya Lomachenkova
The Mikhairovsky Ballet and Orchestra
Conductor: Stanislav Kochanovsky
今回タイトル・ロールを踊るバレリーナはプレ・キャストではアナスタシア・マトヴィエンコ、オクサーナ・シェスタコワ、イリーナ・ペレンの3人となっていて、誰の日を見ようか迷ったのだけど、確か日本で評判が良い&アルブレヒトもこのバレエ団生え抜き(?多分)、ということでシェスタコワ&ミハイル・シヴァコフ組を選択(他の二人のパートナーはマトヴィエンコ)。結果、大正解だった。
シェスタコワは清純で慎ましやかで、これだけ一幕の村娘がぴったりくるダンサーを見るのは久しぶり。背は高すぎず・低すぎず、むやみやたらと手足が長いわけでなく、スパルタクスに登場したサイボーグ系バレリーナ達(?)と比べるとややレトロな雰囲気があってほっとするというか・・・。ニ幕でウィリになってからの没入ぶりは素晴らしくて、ごく自然に彼女のジゼルの世界に引きこまれる。ふんわりと繊細なポール・ド・ブラと宙に漂う浮遊感がとりわけ印象に残った。パートナーのシヴァコフは長身で見栄えのいいダンサーだけど、貴人という雰囲気はあまりなかったかな(ごくごく普通の青年というか・・・)。彼の踊り自体には特にひかれるものはなかったけれど、かといって特別不満があったわけでもなし。二人のパートナーシップは悪くはなかったけれど、トータルでみるとシェスタコワの方がアーティストとして成熟している印象があって、彼女と対等の(もしくはより成熟した・大人の)パートナーと組んでいたらどうなっていただろう・・・とついつい想像力を掻き立てられてしまった。カーテン・コールでは、心がまだ地上に戻ってきていないという表情のシェスタコワと彼女を支えるシヴァコフに、客席から心のこもった拍手がおくられていました。(ちなみにこのマチネ公演、お客の入りは六・七割といったところだったか)
プロダクションについて若干・・・
「セット」一幕の村の情景・ジゼルとアルブレヒトの家は割とリアルな描かれ方でちょっとロイヤル版のと近かったような。(背景・遠方にお城がしっかり見える)二幕では背景画の森に加えて舞台の下手最前線にあるジゼルのお墓の前と舞台後方・中央に木の茂みが配されていて、これが上がったり下がったりする仕掛け。(お墓は最初茂みに隠れて見えない。ジゼルが最後に消えていくのは後方の木の陰、等々)
「衣装」新制作?どれもピカピカの新品って感じで色が鮮やか。ジゼルと彼女の友人達の衣装はブルーと白をベースにしていて、配色自体はトラディショナルだけど決して質素ではなく、"街着"として十分通用しそう(笑)。アルブレヒトはアースカラー(茶系)の衣装でこれはよくあるタイプ。クールラント公ご一行の衣装は赤と金を基調とした華美なもので、登場してきたとき一瞬・スパルタクスの使いまわしか?と思ってしまったほどパッと見路線が似てる。まあ赤と金はロシアの色だから(?)、らしくていいです。ニ幕でやや驚いたのがミルタの着ていたロマンティック・チュチュ。スカート部分が日頃よく目にするタイプのものと比べるとあまりハリがなくて、下にストンと落ちる柔らかそうな?素材のもの。多分他のダンサー達が着用していたチュチュと同じ素材と推測するのだが、ミルタ役のコシェレワは背が高いので、このスカートだとちょっと間延びして見えてしまった。(グラン・ジュテしたときにスカートが脚にまとわりついてふわりと浮かないのが不満で・笑。"普通のドレス"として見れば綺麗なんだけど・・・。ちなみにジゼルも含めミルタ以外のウィリたちは肩の露出抑え目のパフスリーブの袖で、可愛らしい雰囲気。コール・ドの、"肝心"の踊りの方は、普通以上に綺麗なんだけれど特に心動かされることはなく・・・)
「演出」たしかニ、三のシーンで聴きなれない音楽が挿入されて振付が引き伸ばされていた(二幕のジゼルの出の場面とか・・・)。マイム・シーンでちょっとひっかかったのが、アルブレヒトと従者のやり取りやヒラリオン(キャスト・シートには"Game keeper"としか書いてないけど)の語り部分はやけに丁寧に描かれているのに、肝心の(と思える)部分が抜けていたこと。一幕でアルブレヒトが「なんて美しい顔だ・・・」と感嘆して衝動的に永遠の愛を誓うシーン、「美しい・・」の部分がなくていきなり誓いをたてているように見えたのだけど・・・。あと、ベルタがジゼルと村の娘達にウィリ伝説を話し聞かせる場面は割愛されていた。(マリインスキー版も抜けてるけど、あのマイムシーンは絶対あった方がいいと思うけどなぁ・・・)あと、やや滑稽だったのが二幕の演出で、暗い森の中に鬼火が出るんだけど、これが花火みたいにバチバチ光って音もかなり派手だったこと。ちょっと場の雰囲気にそぐわない気がしたんですが・・・。(あ、結局ボルゾイ犬は出ませんでした。代役はなし・笑)
最後に音楽・オケ、これは面白かった。この演目ではあまり耳にした記憶のない厚い音で、かつ随所でオペラ風と形容したくなるような・ドラマ性をくっきり浮き立たせる演奏がきかれて(若干装飾性過多のきらいもあったけど・・・)、この音楽の解釈としては大いにアリ、と独り言ちた。
Giselle: Oksana Shestakova
Albrecht: Mikhail Sivakov
Berthe: Yanina Kuznetsova
Prince of Courland: Andrey Bregvadze
Bathilde: Alena Videnina
Game-keeper: Anton Chesnokov
The Duke's squire: Roman Petukhov
Pas de deux: Anastasya Lomachenkova, Anton Ploom
Myrthe: Irina Koshleva
Wilis: Sabina Yapparova, Anastasya Lomachenkova
The Mikhairovsky Ballet and Orchestra
Conductor: Stanislav Kochanovsky
今回タイトル・ロールを踊るバレリーナはプレ・キャストではアナスタシア・マトヴィエンコ、オクサーナ・シェスタコワ、イリーナ・ペレンの3人となっていて、誰の日を見ようか迷ったのだけど、確か日本で評判が良い&アルブレヒトもこのバレエ団生え抜き(?多分)、ということでシェスタコワ&ミハイル・シヴァコフ組を選択(他の二人のパートナーはマトヴィエンコ)。結果、大正解だった。
シェスタコワは清純で慎ましやかで、これだけ一幕の村娘がぴったりくるダンサーを見るのは久しぶり。背は高すぎず・低すぎず、むやみやたらと手足が長いわけでなく、スパルタクスに登場したサイボーグ系バレリーナ達(?)と比べるとややレトロな雰囲気があってほっとするというか・・・。ニ幕でウィリになってからの没入ぶりは素晴らしくて、ごく自然に彼女のジゼルの世界に引きこまれる。ふんわりと繊細なポール・ド・ブラと宙に漂う浮遊感がとりわけ印象に残った。パートナーのシヴァコフは長身で見栄えのいいダンサーだけど、貴人という雰囲気はあまりなかったかな(ごくごく普通の青年というか・・・)。彼の踊り自体には特にひかれるものはなかったけれど、かといって特別不満があったわけでもなし。二人のパートナーシップは悪くはなかったけれど、トータルでみるとシェスタコワの方がアーティストとして成熟している印象があって、彼女と対等の(もしくはより成熟した・大人の)パートナーと組んでいたらどうなっていただろう・・・とついつい想像力を掻き立てられてしまった。カーテン・コールでは、心がまだ地上に戻ってきていないという表情のシェスタコワと彼女を支えるシヴァコフに、客席から心のこもった拍手がおくられていました。(ちなみにこのマチネ公演、お客の入りは六・七割といったところだったか)
プロダクションについて若干・・・
「セット」一幕の村の情景・ジゼルとアルブレヒトの家は割とリアルな描かれ方でちょっとロイヤル版のと近かったような。(背景・遠方にお城がしっかり見える)二幕では背景画の森に加えて舞台の下手最前線にあるジゼルのお墓の前と舞台後方・中央に木の茂みが配されていて、これが上がったり下がったりする仕掛け。(お墓は最初茂みに隠れて見えない。ジゼルが最後に消えていくのは後方の木の陰、等々)
「衣装」新制作?どれもピカピカの新品って感じで色が鮮やか。ジゼルと彼女の友人達の衣装はブルーと白をベースにしていて、配色自体はトラディショナルだけど決して質素ではなく、"街着"として十分通用しそう(笑)。アルブレヒトはアースカラー(茶系)の衣装でこれはよくあるタイプ。クールラント公ご一行の衣装は赤と金を基調とした華美なもので、登場してきたとき一瞬・スパルタクスの使いまわしか?と思ってしまったほどパッと見路線が似てる。まあ赤と金はロシアの色だから(?)、らしくていいです。ニ幕でやや驚いたのがミルタの着ていたロマンティック・チュチュ。スカート部分が日頃よく目にするタイプのものと比べるとあまりハリがなくて、下にストンと落ちる柔らかそうな?素材のもの。多分他のダンサー達が着用していたチュチュと同じ素材と推測するのだが、ミルタ役のコシェレワは背が高いので、このスカートだとちょっと間延びして見えてしまった。(グラン・ジュテしたときにスカートが脚にまとわりついてふわりと浮かないのが不満で・笑。"普通のドレス"として見れば綺麗なんだけど・・・。ちなみにジゼルも含めミルタ以外のウィリたちは肩の露出抑え目のパフスリーブの袖で、可愛らしい雰囲気。コール・ドの、"肝心"の踊りの方は、普通以上に綺麗なんだけれど特に心動かされることはなく・・・)
「演出」たしかニ、三のシーンで聴きなれない音楽が挿入されて振付が引き伸ばされていた(二幕のジゼルの出の場面とか・・・)。マイム・シーンでちょっとひっかかったのが、アルブレヒトと従者のやり取りやヒラリオン(キャスト・シートには"Game keeper"としか書いてないけど)の語り部分はやけに丁寧に描かれているのに、肝心の(と思える)部分が抜けていたこと。一幕でアルブレヒトが「なんて美しい顔だ・・・」と感嘆して衝動的に永遠の愛を誓うシーン、「美しい・・」の部分がなくていきなり誓いをたてているように見えたのだけど・・・。あと、ベルタがジゼルと村の娘達にウィリ伝説を話し聞かせる場面は割愛されていた。(マリインスキー版も抜けてるけど、あのマイムシーンは絶対あった方がいいと思うけどなぁ・・・)あと、やや滑稽だったのが二幕の演出で、暗い森の中に鬼火が出るんだけど、これが花火みたいにバチバチ光って音もかなり派手だったこと。ちょっと場の雰囲気にそぐわない気がしたんですが・・・。(あ、結局ボルゾイ犬は出ませんでした。代役はなし・笑)
最後に音楽・オケ、これは面白かった。この演目ではあまり耳にした記憶のない厚い音で、かつ随所でオペラ風と形容したくなるような・ドラマ性をくっきり浮き立たせる演奏がきかれて(若干装飾性過多のきらいもあったけど・・・)、この音楽の解釈としては大いにアリ、と独り言ちた。
2008-07-31 09:10
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