スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
-------- --:-- | スポンサー広告
RO「ザ・レイクス・プログレス」 (7/11)
あ~もう見てから既に一週間以上たってしまった。先々週は金・土とオペラな週末を過ごし、フローレス・コンサートの前日はロイヤル・オペラの「ザ・レイクス・プログレス」を鑑賞。以下、チンタラ・細々と自分用にしたためた雑感メモです・・・

- チケットをブックする段階では、"へえ~ストラヴィンスキー作曲か 珍しいオペラ(ってか自分が知らないだけだけど)だから見ておこうかなー"という程度のノリで、例によって予習も期待もせずに見に行ったんだけど、これがもう、滅法面白い音楽&プロダクションだった!

-「ザ・レイクス・プログレス」(放蕩児のなりゆき)っていうとバレエでは見たことあるけど・・・数年前にロイヤル・バレエがニネット・ドゥ・ヴァロワ版をリヴァイヴァル上演。ウィリアム・ホガース*の連作版画に想を得て創られた、マイム中心の?芝居色の強い作品で、何やらケッタイな(趣味悪い)作品だなぁ~といい印象がなかったこと、ヨハン・コボーが怪演していたことしか憶えてない。

(*今や社会史資料として貴重な、18世紀当時の英国の世相を風刺した絵を沢山残してますね。この連作は「道徳教育画」シリーズの一つと呼んでいいのかな?)

-同じ題材を使っていても、バレエとオペラではエラい違いであった。まず、バレエ版を見たときに多少は感じられた猥雑さとデカダンという要素がこのオペラには感じられなかった。実はホガースとの接点もまるで感じられなかったんだけど・・・リブレットを借りただけ?一体どうやったらあの絵を見てこの音楽をひねり出せるんだろうと不思議でならない・・・作品世界が違いすぎ。(でも、結果としてはホガースとのダイレクトな接点感じられなくても私的には全然オッケーだった。←むしろ歓迎??バレエの方は誰の音楽を使っていたかな~と今検索してみたら、Gavin Gordonという方だそうで・・・このバレエのためのオリジナル・スコアだったのかな?)演出は、バレエの方は18世紀という時代考証にほぼ忠実な創りになっていたような記憶があるんだけど、このオペラ(プロダクション)では現代・多分50年代ぐらいのアメリカ?に置き換えてる。(←シーンが進むにつれ、舞台設定はハリウッドとわかる。ヌレエフ版シンデレラを思い出す・・・放蕩児・トム・レイクウェルは時代の寵児・セレブ的存在。)

-そもそも英語のオペラを聴いたのは初めてだったかも・・・発音はアップダウンが激しく子音の強い、"英"語だった(笑)。特にレチタティーヴォのときの音の伸ばし方とかアクセントの置き方が普通に話すときとは違っていて、外国人の話す訛りのある英語に聴こえて面白かった。

-音楽は、ストラヴィンスキーならではのあの独特のリズム感とウィットが随所に顔を出していて、一幕の最初のタブローではレオタードを着たダンサーがいまにも舞台に現れるんじゃないかと錯覚起こしそうになることも・・・。ただ、ストラヴィンスキーだからひねった変化球ばっかり飛んでくるんじゃないかという偏見は大いに裏切られ、わりと素直で聴きやすい音楽が並んでる。特に、主役のトム・レイクウェルにはイノセントで透明度の高い音楽が与えられている。

- そのトム・レイクウェルを演じたのは、チャールズ・カストロノヴォ。清潔でどこか"青さ"を感じさせる美声の持ち主で、あ、この人モーツァルトが似合いそう!と、思わず色めき立つ(理想のモーツァルト・テナーを探し求めて幾星霜・・・なもので・笑)。冒頭のジーンズ姿がなかなかキマっているところを見るとスタイルはよさそうなんだけど、いかんせんオペグラ持ってくるのを忘れたので顔がはっきりわからない。(この人今までに見たことあったかなあ・・・思い出せない。)素直で無邪気といえば、このオペラ中唯一聞き覚えのあるソプラノのアリア、"Quietly night.....I go, I go to him"。後半部はストレートで伸びやかで、なんだか子供が一大決心して冒険に出かけることを高らかに宣言してるような、屈託のなさ・潔さ。(実際には都会に出て行ったトムを故郷で待つ恋人・アンが、音信不通の彼を探し出すべく父の反対を押し切って家を出るときに歌われる。へえーこういう場面の歌だったんだ・・・)アン役のサリー・マシューズはやや力入りすぎ・声張り上げすぎで、清々しさに欠けていたような・・・。

- この一幕のハイライト(アンのアリア)が終わってやや気が抜けたか、続く都会の遊興場のシーンではやや眠気に襲われる(一週間の疲れがどっと出るのか、金曜の仕事帰りに観劇するとありがちなんだよね・・・)。演出もセットもかなりおちゃらけていて、かる~いノリ。トムはニック・シャドウ(文字通りトム自身のダークサイド・下僕にして主人。狂言回し的な役)の手引きでババというトルコ人大女優?に出会い、懇ろな関係に。ディーヴァなセレブのババは思いっきり戯画的に描かれていて、見た目ドラッグクイーンみたい・・・(演じたのはパトリシア・バードンというソプラノで、よく雰囲気出してた。)

- 休憩時間にキャスト・シートを広げて、まず目についたのが・・・リブレットにW.Hオーデン。へええあの有名な詩人ではないか~!(名前しか知らないけど)そしてディレクターは・・・Robert Lepageって、どこかで見た名前だなぁ・・・《2秒ほどシートを見つめる》 あ~っこの人、確かシルヴィの次作をプロデュースする人ではないかー!

・・・へええこの方がねぇ。演出・舞台美術はユーモラスで遊び心があるけど決してやりすぎ・下品にならないところがいいし、この人のセンス結構好きかも。(シルヴィーのショーにも期待できそうかも~)ここまでで美術面で気に入ったのは、一幕一場の背景の「空」。二人の恋人が草原らしき広々とした空間に敷物をひろげて寝そべっているシーンで始まり、アンの父親、謎の人物・ニック・シャドウの登場まで、この空をバックにアクションが起きるんだけど、よくよく見るとスタティックではなくて少しずつ・少しずつ雲が流れて空の色が微妙に変化していて、見ていて飽きない。密かに仕事が細かくて、こういうの好きだなあ・・・

- 休憩後はプール・サイドのシーンが印象的。トムとババは結婚するが、トムはまだアンのことを忘れられないし、やたら騒々しくて女王様気取りの新妻に早くも嫌気がさしている。邸宅内の?プール・サイドでランチ(?)している二人。一方的に喋りまくるババ、トムは新聞の陰に隠れてひたすら彼女を無視。業を煮やしたババが暴れると、うっせー!と彼女をプールの底にしずめてしまう。(あらら殺人事件に展開?と思いきや、ババは後でちゃんと生き返る。どうやら「妻を葬る」行為を象徴するための演出だったよう・・・)このあとニック・シャドウが現れ、借金でクビの回らないトムに、錬金術で一攫千金を狙おうと悪魔の囁き。石をパンにする機械?(ここではTV)を見つけたからとかなんとか・・・シュール。

- プール・サイドのシーンのセット・照明が面白かった。はじめ普通に明るい舞台ではプールの色はグレー、ややのっぺりと静的でちょっとホッパーの絵を思い出す。ババがプールに沈んだ後オークションのシーンとのつなぎ部分で、舞台の照明が徐々に落ちていくと、このプールがいきなり表情を変え始める。薄暗い舞台、そこだけ照明があてられるや、平面から突如くっきり・3Dに。プールの水がキラキラ光ってきれい・・・このときのライティングが、ほんとうにまぁ~微妙な匙加減で素晴らしかった。(照明でこんなに興奮したのは記憶にないぐらい。)このプロダクション・チーム、結構いいかも~。(現代的演出というと思い出す・コンチネンタル風のミニマリズムとは明らかに違って、どこか開放感があってポップというか・・・)

- 棚ボタで転がりこんできた遺産を使い果たして一文無しになってしまったトムに、ニックが一年分の給料を払ってくれと迫る。彼の真の狙いは、借金のカタにトムの「魂」を頂戴すること。命乞いするトムに、ニックがお情けで最後のチャンスを与える・・・カード・ゲームでトムが勝てば許してやろう(結局、トムは勝って命拾いするが、狂気に陥ってしまう)。影だと思っていたものが実体をのっとってしまう、悪魔に魂を売り渡す・・・お馴染みのテーマだけど、このシーンでのニック・シャドウ=ジョン・レリーヤ?(Relyea)の迫力が凄かった。この方、かなり気の毒な衣装着せられたりしてたけど、ステージ・プレゼンスはかなりのもの。

- さーそしてこのオペラのハイライト、最終シーン。舞台真ん中に正方形にくり抜かれた穴。その四角い空間が精神病院の一病棟。鉄パイプ製のベッドが整然とならぶ素っ気無い空間に、心を病んだ人々が所在なさ気に佇んでいる。トムは右手前の端っこのベッドで横になっている。そこに、父親を伴ってアンが訪ねてくる。正気を失ったトムはなぜか自身をギリシャ神話の美少年・アドニスと思い込んでいて、ヴィーナスが迎えに来てくれる日を待ち望んでいた。アンの姿を認めて、やっと来てくれた!と喜びに包まれる。アンはそんなトムを優しく介抱して歌をうたってきかせる。

- 音楽のマジックのお陰で、この場面のトムとアンは本当にアドニスとヴィーナスでもおかしくない・俗世を離れた存在に見えた。平和で安らかで、狂人の見ているヴィジョンがなんて美しいことか・・・。アンが歌う子守歌(に聞こえた)には無条件の愛情がこもっていて、あああこれはイカン~と抵抗空しく不覚にも涙してしまった。ズルいぞ~ストラヴィンスキー爺ー!(←失礼・でも年取ってからの写真しか見た記憶ないんだもの・・・)

- 最後は、死んだはずのトムもむっくり起き上がって、全員で「放蕩者の行き着く先は・・・」と訓話風の歌で〆・DonGみたいな終わり方。(あっちでは、地獄に落ちたジョヴァンニは甦らないけど・・・。)いやはや楽しかったです~5つ☆進呈!


The Rake's Progress
(Opera in three acts)

Music: Igor Stravinsky
Libretto: W. H. Auden, Chester Kallman

Director: Robert Lepage
Associate Director: Sybille Wilson
Set designs: Carl Fillion
Costume designs: Francois Barbeau
Lighting: Etienne Boucher
Video: Boris Firquet

CAST
Anne Trulove: Sally Matthews
Tom Rakewell: Charles Castronovo
Nick Shadow: John Relyea
Mother Goose: Kathleen Wilkinson
Baba the Turk: Patricia Bardon
Trulove: Darren Jeffery
Sellem: Peter Hoare, Peter Bronder

Conductor: Thomas Ades
The Orchestra of the ROH
(The 20th performance at the ROH)

Co-production with Teatre Royal de La Monnaie, Opera National de Lyon, San Francisco Opera and Teatro Real, in collaboration with Ex Machina
2008-07-23 10:37 | オペラ | Comment(2)
Comment
こんばんわ。興味深いオペラでしたね。僕は、演出は可もなく不可もなくという印象でしたが、ストラヴィンスキーの音楽の豊かさを存分に楽しみました。自分のところにも書くつもりですが、歌手のレヴェルがもう少し高ければな、と思わずにはいられませんでした。
守屋 2008/07/24(木) 05:13:58) 編集


守屋さん こんばんは。ほんとに音楽が魅力的でしたね。(ストラヴィンスキー、やはりタダ者じゃないですねー!)

プロダクション・チームのEx Machinaってケベック出身のアーティスト集団なんですね(ロベール・ルパージュのHPにも出てたのを思い出しました。彼が創設メンバーの一人?)。私はミョーにあの照明にハマってしまいました・・・。

Naoko S 2008/07/24(木) 08:59:27) 編集

コメントを書く
#

管理者にだけ表示
08
--
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
--
>>
<<
--
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。