スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
-------- --:-- | スポンサー広告
ウィルフリード・ロモリの引退公演(5/6) Part 4
はあ・・・やっとメイン・イベントにたどりついた!(ヤレヤレ・・・)

☆ "Un Trait d'union" (プレルジョカージョ)

パリ・オペラ座バレエ団初演: 2003年12月
音楽(録音): バッハ/チェンバロ協奏曲 第5番 ヘ短調 BWV1056 第二楽章 (largo)
効果音: Marc Khanne
照明: Jacques Chatelet
11回目の上演

キャスト: ウィルフリード・ロモリ、ローラン・イレール (etoile invitee)

オペラ座エトワールのウィルフリード・ロモリが自身の引退公演の特別上演演目として選んだのは、アンジュラン・プレルジョカージョが1989年に創作した「アン・トレデュニオン」。ロモリはオペラ座における代表的な"プレルジョカージョ・ダンサー"であり、振付家の信任も厚い。パートナーには、こちらもプレルジョカージョ作品の第一人者であるローラン・イレール。お膳立てはすっかり整って、あとはもう、ベテラン・エトワール二人ががっぷり四つに組んで繰り広げる男のドラマに、ただ身を委ねるだけ・・・

(・・・えー私的にはこの作品、最近オペラ座のレパートリー入りした同じ振付家による作品《メデ、MC・・・》よりも遥かに一般受けすると思うし魅力的な作品だと思ってるのだけど、なんとオペラ座での上演は初演の2003年12月以来、実に4年半ぶりのお目見え。せっかくレパートリー入りしたのにその後本公演では全然かかってないのよね。《勿体無いったら・・・》前回はガルニエで上演されて、どちらかというとよりコンパクトな・小屋みたいな空間の方が似合うのではないか、という印象を持っていたんだけど、今回バスティーユの巨大なステージで見ても特に違和感はなかった。実は、バスティーユの開けた空間だと緊迫感が拡散してしまうんじゃないかなぁ・・・なんてちょっと心配してたんだけど、そんなことは全然なくて。さすが、ヘヴィー級の存在感を持つお二方ならでは、と感服した次第・・・)

幕があくと、天井からランプが二本吊り下げられているだけの、がらんとした・暗い舞台。バッハのピアノ曲が鳴り始めてほどなく、舞台下手から身をかがめて一人掛けのソファをゆっくり前に押しやりながら登場するイレール。

  ・・・ここで、あれ・・・?と異変に気づく。ライティングが、いつもと違う・・・

舞台を水平移動するイレールを後ろからまっすぐに光が射しているのはいつもと同じ、ただ光の色と強さが・・・なんというか、これまで見た記憶にあるのよりも色が青白くて強度の高い照明なのだ。結果、光と影のコントラストがきつくて、なんというか、たとえて言うなら記憶の中にある照明がレンブラントとすると、これはカラヴァッジオ・・・メリハリが強くて 影の部分が真っ黒・・・。ふむ。

・・・という冒頭のちょっとした違和感をクリアすると、舞台上で一人ソファと戯れるイレールの動きに目が釘付け。気のせいか、イレールの上半身・特に上腕部の筋肉がエクスの時よりも少し戻っているように見えて、ちょっと嬉しくなる。

ややあってロモリが舞台に登場すると、瞬時に舞台に緊張感が走る。最初はポーカーフェイス(どちらかというとコワモテ)で登場するロモリ、徐々にイレールを見つめる表情が変わっていくのが印象的だった。好奇心や怖れや、色んな感情のこもったロモリの目・・・。ああこれはいい舞台になりそうだな・・・と確信して、座席に深く身をうずめる。

☆☆☆

プレルジョカージョのこの作品を初めて見たのは、オペラ座のレパートリー入りした2003年12月。初演キャストはこの二人で、共に当時既に40歳の坂を越えていた(または越えつつあった?)はず。背面ジャンプするイレールをロモリががちっとキャッチするアクロバティックなシーンに息を呑み、二人の男が時に反発し・時に魅かれ合うドラマが息苦しいほどのスリリングさで迫ってくるのに、ただただ圧倒された。不思議とダンス作品を見ているというよりは密室劇を見ているような錯覚に陥った・・・そんな記憶がある。

二人のベテラン・ダンサーが一歩も譲らず・火花を散らす光景に酔いながらも、このときははっきり、自分の中で作品の主役はイレールだった。イレールとロモリ、この二人の顔合わせといえば・・・アルブレヒトとヒラリオン、ロメオとティボルト・・・全幕古典作品ではライバル同士の役柄を演じることが多くて、しかもロモリ=名バイプレイヤーという刷り込みがあったせいか、その時のロモリは、私の目にはイレールのサポート役にしか見えなかった。照明との絶妙の相性の良さで、美しく精悍な上半身がまるで動く彫刻のようだったイレール。相変わらず運動神経抜群・相変わらず俺様オーラの枯れないイレールは(ファンの目には)、明確にあの舞台上のスターで、ロモリは彼を輝かせてくれる・頼りになるサポート・キャストだった。

時は流れて再び二人によるこの作品の再演を目にすることができたのは、初演から4年後の昨秋、プレルジョカージョ・バレエの本拠地・パヴィヨン・ノワールで。この間、二人のダンサーを巡る状況も変化して・・・ロモリはオペラ座史上最高齢でエトワールに任命され、イレールは徐々に第一線から退き、昨年2月正式に引退。以後舞台から遠ざかりブランクのあったイレールは、当然ながら動きのキレでは現役のロモリに負けていた。初演時に感じた、主役-脇役的なポジショニング(というより私自身の目線)はもはや吹っ飛んでいて、舞台上には"等しく主役"の二人のダンサーが。二人でシンクロして踊ると断然ロモリの方に目が行ってしまい、イレール・ファンとしては時の流れの無情さを感じる刹那もあったけれど、イレールも存在感と"情熱"では一歩も譲らず。この二人の間にだけ生じる特別な化学反応-パートナーシップはさらに進化しているように見えて、作品としてはより彫りの深い・面白いものになっていた。

そして今回。ダンサーというのはやはり踊れば踊るほど調子が上がってくる人たちなのか、二人ともエクスの時よりもさらに若々しく見えたし、何よりテンションの高いことといったら・・・まさに渾身の舞台。もしかしたらこの作品を・このデュオを見られるのはこれが最後かもしれない、と多少感傷的な目で舞台を見ていたエクスの特別公演の時とちがって、今回はなぜか、やたらめったら嬉しくて、ほとんど躁状態で舞台を見ていました。(どんなにおさえようとしても、頬が緩んでしまうのがわかる・・・)

あ~イレールとロモリ、全くもう、なんてなんてカッコイイんだろう!この、見た目はややくたびれた中年男のデュオが、どこの誰よりも私を興奮させてくれ・感動させてくれるという事実が、愉快で愉快で・楽しくて堪らなかった。そして同時に、これは奇跡みたいな話だ・・・とちょっぴり厳粛な気持ちにもなる。舞台上の二人は真のアーティストであると同時に、サヴァイヴァーなのだ・・・ 《イレールお疲れ様・そしてロモリ、ありがとう~!》

【つぶやき】 ヌレエフ世代の女性エトワール達がどんどん引退していった頃思ったことなんだけど、オペラ座もNDT3みたいなカンパニーを創ればいいのにね・・・と。この夜のロモリとイレールを見てつくづくそう感じた。人生経験を積んだ大人のダンサーでなければ表現できない世界、それを見せられるのがオペラ座バレエ団の最大の魅力で、私が一番見たいものなのに・・・。関係諸氏、"POB II"(?)の創設・・・ いかがなモノでございましょうか?? (え 一代で潰れる、って?笑)

※「トレデュニオン」、多少作品の内容がわかる?描写的なメモは、前回鑑賞時のこちらにあります↓

http://londonballet.blog60.fc2.com/blog-entry-333.html

<完>
2008-05-20 10:24 | パリ・オペラ座バレエ | Comment(2)
Comment
素晴らしいレポをありがとうございます!
この2人でこの演目を見続けていらしたNaokoさまならではの視点で、ロモリの最後の公演をご一緒させていただいたような臨場感を感じることができました。この日に照準を合わせて調整されたであろう我が殿、イレールの深みを増したオーラ、やはり舞台に復帰して欲しいパフォーマーですよね。

”POB Ⅱ”素晴らしい!
本公演よりも人気を集めたりして・・・(笑・あり得る)
稀有な人材がある一定の時期に集中して現れた、その黄金期を通常のダンサーの寿命と一律に扱うのは乱暴な、と言っても良いほどの悪しき平等主義。
踊れるダンサー、観たい観客双方にとって幸せを追求するためにも是非・・・と祈願するわたくしでした。
maria 2008/05/23(金) 05:04:18) 編集


mariaさん こんにちは。

昔話ばかり長いレポで(笑)、申し訳ありませぬ~。まあ~しかし、二人ともカッコよかったですよー ホントに!

>>”POB Ⅱ”素晴らしい!
本公演よりも人気を集めたりして・・・(笑・あり得る)

ウフフ そうですよね~ 軒を借りて母屋をのっとる・・・ってな展開になってしまうと穏やかでないですけどねー(笑)。←ファン馬鹿

以前、引退直前だか直後だったかのイザベル・ゲランのインタビューを読んだときに、パリオペの定年制度について彼女が「40歳になったとたんに貴方はもういらないと言われるのは納得できない」と語っていたんですよね。で、それはそうだよなぁ・・・と私まで悔しくなったりして。ゲラン、プラテル、ルディエール・・・皆さんまだまだこれから、というときに引退してしまいましたものね・・・(当時は女性は40歳定年だったし)。

で、一代限り・・・のリスクをおかしても(笑)、この素晴らしいアーティスト達がパフォーマーとしてのキャリアを続けられる場があればいいのに・・・と切実に感じたのですわ。パリオペにもう一つバレエ団創るのがムリなら、4-5年とか期間限定の"プロジェクト"という形でならイケるんでは?と、結構真剣に考えちゃいました(爆)。

・・・さて、いよいよ日本ではル・パルク開幕ですね!maria様のレポ楽しみにしておりますので~v(沢山書いてね~~!)
Naoko S 2008/05/23(金) 08:06:08) 編集

コメントを書く
#

管理者にだけ表示
07
--
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
--
>>
<<
--
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。