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ロイヤル・オペラ 『シラノ・ド・ベルジュラック』
ブログを始めようと思いたってから結局スタートするまでに一ヶ月以上かかってしまいました・・・その間足を運んだ公演の中で印象深かったものについて、いくつかレポします。まずはロイヤル・オペラでの(おそらく)最後の舞台、といわれたプラシド・ドミンゴ主演のシラノ・ド・ベルジュラック。

2006年5月27日 於ロイヤル・オペラ・ハウス
シラノ・ド・ベルジュラック(フランコ・アルファーノ作曲)

Conductor: Mark Elder
Director: Francesca Zambello
Set Designs: Peter J. Davison
Costume Designs: Anita Yavich

Cyrano: Plácido Domingo
Roxane: Sondra Radvanovsky
Christian: Raymond Very
De Guiche: Roman Trekel
Ragueneau: Carmelo Corrado Caruso
プラシド・ドミンゴという歌手の偉大さを、初めて理屈ぬきで、肌身で感じられた夜。時代考証に忠実でオーソドックスなプロダクションも好みで、とても、とても満足しました。面白かった!

過去にドミンゴの舞台に遭遇した機会はそう多くなくて、全幕はスペードの女王、あとは二度のガラ公演のみ。正直言っていずれも格別心に残る舞台ではなかった。(昨夏の、いまや伝説と化しているドミンゴのジークムント@ワルキューレを私は見ていない。チケット争奪戦に加わる気力がなくて他のキャストで見たのだった。)彼がコヴェント・ガーデンで歌うのはこれが最後、という噂もあった「シラノ」、新聞評はミックスしていたし、初日に見てきた友人の感想は歯切れが悪く、あまり期待せずオペラハウスに足を運んだのですが・・・。

ドミンゴ、さすがに声量は衰えたのかもしれない・・・と思わされるシーンが何度かあった(特に前半)。けれど、そんなことは問題じゃない。彼がそこに存在していることがすでにドラマ、と感じさせる圧倒的なステージ・プレゼンス。登場シーンから既に、ドミンゴはシラノというオペラの真っ只中にいて、見ている我々も彼を信じずにはいられない・・・ごく自然にドラマに引き摺り込まれる。この磁力の強さ・陶酔感はパヴァロッティの舞台から感じられたのと同質のもの。そして、何と言っても、あの声!あんなにseductive(誘惑的)な色をもった声質の人はなかなか他に思い浮かばない。彼の口から台詞がもれる瞬間に舞台がロマンティ ックな色一色に染まってしまうのだから、いやはや大したものです。

で、この人の素敵な所は、相手役の女性が舞台に登場するや、声にぐんと艶が出て、俄然生き生きしてくること。一幕、野郎共に囲まれてシラノが劇場で剣の腕を見せ付けるシーンよりも、続く二幕一場で密かに思いを寄せる従妹のロクサンヌと二人きりになるシーンの方がはるかに魅力的。そして、このオペラの最大の見せ場、二幕二場のロクサーヌの家のバルコニー・シーン。ハンサムなだけが取り柄で、ロクサンヌが渇望する詩人の魂を持つ恋人像には到底役不足のクリスチャンに代わり、シラノが朗々と恋心を歌い上げるシーン。大人の男の、抑制のきいた甘い声であれだけ美しい詩を捧げられて落ちない女はいないでしょう!奔流のようにとめどなく溢れ出る情熱的な求愛の言葉に、遂に陥落したロクサンヌが月明かりに照らされて恍惚とした表情を浮かべるシーンはとても美しかった。自分は黒子に徹して最後にクリスチャンを彼女のバルコニーに登らせて、抱擁をかわす二人を絶望した表情で見守るシラノ=ドミンゴの姿に思わず涙ぐんでしまいました。

最終幕(四幕)、不幸な戦死を遂げたクリスチャンの形見の手紙(勿論書いたのはシラノ)を心の支えに修道院にひきこもって俗世間から離れた生活を送るロクサンヌを訪ねるシラノ。ロクサンヌは気づかないが、コートの下に政敵に襲われた際に負った致命傷を隠していた。いまわの際に、クリスチャンからの最後の手紙を見せてほしいと頼むシラノ。ロクサンヌから手渡された手紙、中身はそらんじているので見るともなく読み上げる。その声と調子は、まさにあの夜バルコニーで聴いた男のもの・・・驚愕したロクサンヌが、あれはシラノだったのだ、自分が本当に愛していたのもシラノだった・・・と気づくが時既に遅し。最後まで戦友の思い出に敬意を払い、恋文を書き続けていたのは自分だったと告白することなく事切れるシラノ。

この作品は滅多に上演される機会がなく、今回ドミンゴのたっての希望で実現したらしい(初演はMETにて)。音楽的にはさほど傑出した部分がなくて、聴かせどころとなるわかりやすいアリアなども殆どないけれど、プッチーニ(もしくはドビュッシー)の印象主義の影響が随所に感じられるやや移り気な音楽は、私的には結構面白くて楽しめた。何よりリブレットが魅力的で、既に120以上のレパートリーを持つというドミンゴをして、長いキャリアの最後に挑戦したいと思わせたことが頷ける。騎士道精神に溢れたロマンティック・ヒーローの役柄・・・愛と忠誠を誓った婦人への憧れと激情を切々と訴えるシーンがハイライトであるこのオペラ、確かに、歌い手にとっては魅力的でしょう。

プロダクションはメトロポリタン・オペラとの共作で、セットとコスチュームの豪華さは特筆もの。特に一幕と二幕一場のセットは、個人的に大好きな、徹底的にディテールに凝った写実的なものだった。一幕のHotel de Bourgogne(コメディ・フランセーズの前身)の4階建ての客席部分は造りがとてもリアル。観客に扮するシンガー&アクターの衣装はデコラティヴで豪華。さらに狂喜してしまったのが、続く二幕一場の「パン屋」のシーン!店主のRagueneauはシラノの友人で、シラノに内密で会おうとするロクサンヌに場を提供するのだが、パン屋の工房がその舞台。天井まで達するかという背の高い棚に、パンと工房の道具がぎっしり詰まっていて、楽しいこと。(こういう細かい造りの舞台をオペグラでしっかり見回すのがなんとも楽しい・・・。しかし、なぜか後半のセットは一転してシンプルな傾向にかわってしまうのですが・・・二幕二場のロクサーヌの家は、趣の全く無い同じ形の箱<アパルトマン>がいくつも舞台上に並んでいるうちの一つだったし、最終幕の修道院のシーンも、セットは比較的簡素。シンプルなアーチ型の柱廊と舞台奥の回廊の中庭と思われるセットが修道院であることを示唆しているが、光の加減の妙な明るさのせいか、フランスというよりはカリフォルニアを想起させられてしまった・・・)

演出はとてもわかりやすく、めりはりがはっきりしていて良くも悪くもややハリウッド映画風だったりしたけれど(戦闘シーンではやたら派手に大砲の音を連発したり)、まあたまにはこういうのも悪くない。

歌手陣で他に特筆すべきはこの夜のソプラノ、ロクサンヌを演じたソンドラ・ラドヴァノフスキー。グラマラスで堂々たる押し出しの、安定した歌唱力を持つディーヴァ。大地にしっかり根をおろした母性を感じさせるタイプでもあり、繊細なご令嬢タイプではまるでなくて(ロクサンヌという女性はどちらかというと後者のタイプかと思っていたのだけど)、自信家で策士で、向こうみずですらあるこのオペラの中のロクサンヌ像にぴったり。間違いなく、彼女はこの夜の成功の最大の功労者の一人。(ご本人のHPによると、ドミンゴと同じ舞台に立つことが彼女の長年の夢だったそうで、METでの昨年のシラノの初演時にその夢がかない、天にも昇る気分だったとか。ちなみに、この方はヴェルディ歌いとして成功をおさめているようです。今回のロクサンヌ役がロイヤル・オペラ・ハウス・デビュー。)

終演後に気づいたのだが、この夜がシラノの千秋楽だった。カーテンコールでロイヤルオペラハウスには珍しくスタンディングオベーション で迎えられたドミンゴが、何度も手を振ってサヨナラのゼスチャーをしていた(ように見えた)のが忘れられません・・・。

<おまけ>

METのサイトでほんのさわりですが音楽を聴けます。一幕の豪華な劇場内部のシーンの写真も見られます。

http://www.metoperafamily.org/metopera/single/reserve.aspx?perf=8286

シラノ・ド・ベルジュラックは実在の人物をモデルにした劇作品。二幕一場で私の目を釘付けにしたパン屋さん・Ragueneauがフォーブール・サントノレ通りにある、と台詞中にあったので、ひょっとして今でも健在かも・・・とサーチしてみたのですが、サントノレ通りの方にパン屋さん兼レストラン?の同名のお店がありました。両者は関係あるのかな??

http://www.parishotels.com/restaurants/prs_list_rest_detail_le_ragueneau_fr.html
2006-07-12 09:31 | オペラ | Comment(2)
Comment
音楽的には全く楽しめませんでしたが、最後のシラノのアリアにはぐっと来ました。
 ドミンゴは来年(!)、2007年のリング・サイクルに2晩でる予定になっています。が、どうでしょうね。僕はキャンセルになる気がします。
守屋 2006/07/21(金) 17:28:59) 編集

>>ドミンゴは来年(!)、2007年のリング・サイクルに2晩でる予定になっています。が、どうでしょうね。僕はキャンセルになる気がします。

うーん あぶないですかね・・・私は彼の出演日を一回だけブックしようと思っているのですが。出てくれれば儲けもの、ぐらいの気持ちでいた方がいいかもしれませんね。
Naoko S 2006/07/22(土) 07:25:39) 編集

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