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パヴァロッティ最後のコヴェント・ガーデン
本題に入る前に、昨夜のプロムス・ラスト・ナイトについて少々。

8時40分頃テレビをつけたら、ちょうどフローレスの歌が始まるところだった(ラッキー♪)。彼はハイド・パーク組で、私が聴けたのはロメオとジュリエット(グノー)とリゴレットからのアリア。まずまず美しい歌唱ではあったけど、とくにぐっとくることはなかったかな・・・。本家・ロイヤル・アルバート・ホールには、アンナ・ネトレプコ(ソプラノ)とジョシュア・ベル(ヴァイオリン)が登場して盛り上がってました。

波打つ黒髪にフル・スカートのきらびやかなドレス、首元にはパールとダイヤモンドのカスケード・ネックレス。グラマラスなネトレプコが歌うレハールのオペレッタは、まるでカルメンのように情熱的でややアクが強くて、ウィーン風の軽妙さは・・・。元気一杯のアンナちゃん(途中フラメンコ風のダンスも披露して、ノリノリ!)、舞台最前線に置いてあった花束を抱え上げるやオケの間を右から左にすり抜けて一番後ろの方まで行ってみたり(終始flirtatiousな仕草たっぷりに)、客席に向けて花を一輪ずつ投げてみたり、お祭り気分を盛り上げるサービスぶりに、会場はやんやの喝采。

ジョシュア・ベルは、一見すると、わー老けたわね~ちょっとオバさん入っちゃったかな~などと不謹慎なことを感じてしまったのですが、演奏の方は、それはそれは素晴らしいものでした(アメリカの作曲家だったかな?間違ってたらすみません、センチメンタルなセレナーデ風の?音楽で、とてもよかった)。彼の道具は1730年代製作の名器という紹介がありましたが、なぜヴァイオリンって昔々作られたものの方が優れているんでしょうね?ネトレプコとベルはシュトラウス作品("Morgan"って作品ありますか?そう聞こえたんですが・・・)で共演、ここでもベルのヴァイオリンの音が印象的でした。

さて、ここから本題。

私が邂逅することのできた唯一の(そして生涯忘れ得ない)パヴァロッティの舞台について、メモ書きしておきます。

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ジャコモ・プッチーニ作
ロイヤル・オペラ 「トスカ」
2002年1月21日 


Conductor: Jesus Lopez-Cobos
Director: John Cox
Sets: Renzo Mongiardino
Costumes: Marcel Escoffier
Lighting: John B. Read
The Orchestra of Royal Opera House

CAST

Floria Tosca: Carol Vaness
Mario Cavaradossi: Luciano Pavarotti
Baron Scarpia: Sergei Leiferkus
Cesare Angelotti: Graeme Broadbent

以下、鑑賞直後に書いたメモの書き写しです。

「"パヴァロッティ最後のコヴェント・ガーデン全幕出演"ということで、チケットは早々にsold-out。何とDay Ticketを買うために、友人と徹夜で並んでしまった。公演前夜8時頃ピアッツアに着くと、既にかなり人が集まっている。人数を数えて前から38人目と当日券を買える範囲内にいることを確認、ただし途中で横入りでもされると危ない位置(当日券は67枚販売)。で、急遽手持ちのメモ用紙で整理券作って前の人から順に配ったみたりして。(一番前にいたご婦人は、そんなものいらない、と受け取ってくれなかったけど!)真冬のロンドン、日頃のシビアな寒さがウソのように妙に生暖かい夜だったのが幸いだったが、前に並んでる人の中には明らかに並び屋みたいな怪しい人たちもいて、ついでにホームレス風だけどやたら元気なグループもいて騒いでたりして、スリリングな(?)雰囲気。

一睡もできずに一夜が明け、空が明るくなり始めた頃にはもうフラフラ。チケット発売開始まであと一時間、といったところで、オペラハウス内部からスタッフが登場。ここで、"オペラ風"のちょっとしたドラマが展開された。

スキンヘッドでメガネをかけた中肉中背の男性スタッフがやや尊大な表情で近づいてきて、並んでる我々を行列の先頭から品定めするかのように見下ろして、一瞥して彼が「並び屋」と判断した人には、"Out!"の一言。同時に「行け!」と手で指図するんだけど、これが相当芝居がかった動作で、オペラチックな光景だった。(かなりよく通る・迫力のある声の持ち主で、きっと声楽を勉強した人だろうなぁと確信。)驚いたことに、宣告下された人たちは抵抗することもなくすごすごと引き下がっていって、これで10人ぐらい自分の前の人数が減った。しかし、よく一目見ただけで並び屋かどうか判断できるなぁと感心してしまった。

続いてオペラハウスのスタッフが徹夜組の労をねぎらう(?)ように、コーヒー・紅茶を振舞ってくれる。ここまで来たら、もうあと一息。結局、Day Seatの中でも良い方の、B列・中央よりの席が取れて大喜び。驚いたことに、チケットを買い終わって外に出ると、もう買える可能性は殆どないのに、長蛇の列が延々続いていた。

当夜、オペラハウスは開演前からこれまで経験したことのないような、何やら異常な興奮と熱気に包まれていた。ストールズやグランド・ティエにはドレスアップしたアッパーな雰囲気のお客がぎっしり、勿論スタンディングも一杯、自分の周囲には長い一夜を共に乗り切ったfellow queuerの皆さんが。オーディトリアムには"electrifying"という形容がまさにぴったりの、異常な熱気が横溢していた。

肝心のパヴァロッティは・・・声量はさすがにそれほどでもないが、この人の声・・・!何と表現すべきか、太陽のような、天真爛漫で伸びやかな声にびっくり。思いがけず弱音の部分のデリケートさにも感心。何よりイタリア語の発音(声)にこれだけよくのる声質、ということに感動してしまう。彼に血気盛んな若者のカヴァラドッシは望めないけれど、この役を知り尽くしたベテランが深い共感をもって演じる「心優しい正義感のアーティスト」という役の造形は感動的で、私的には昨年聴いたAlagnaよりもずっと好きだった。

この夜タイトル・ロールを務めたキャロル・ヴァネスは半端でないテンションの高さで、気性の激しいディーヴァの役がぴったり。見た目は往年の女優風に(京マチ子とか高峰秀子とか・・・)ふくよかで豊かな雰囲気でなかなかいい。あまりに感情移入が激しすぎて、ニ幕の例のアリアでは一瞬声が詰まってしまったほど。でも、それがいかにもこの夜の公演の特別さを表していたようで、私的には全然気にならず、むしろディーヴァの気概にぐっときてしまった。

スカルピアは、オジイサンすぎてちょっと・・・昨年見たイギリス人?バリトンの方がはるかに良かったなあ。オケは、素晴らしかった。3幕最後の超有名なアリアがライトモチーフのように全編通して流れるのだけど、その音の美しかったこと。あと、驚くべきは指揮者!指揮者の横顔が見られる位置にいたんだけど、なんとこの方、すべてのアリアを自ら"歌いながら"振っていたような・・・こういう人、初めて見たような気がする。)

トラディショナルでいかにも南イタリアの趣き溢れるバロックのセット・美術も好みだったし、総合芸術たるオペラを心の底から堪能しました。この夜を境に、オペラにものめりこみそう・・・」

5年以上前のあの夜を振り返って、ふと思うこと。

この時のパヴァロッティは、自分から何かを強烈に放射しているわけではなかった、そんな気がする。歌唱の力はおそらく最盛時の何分の一かに衰えていただろうし、身体が重すぎて舞台上を移動することすらままならない。それでも二千人を超す観客の全神経はこの老齢のテナー一人に集中し、一挙手一投足も逃すまじ、とただならぬ気を発している。当のパヴァロッティは、その尋常でない人々の"気"を終始にこやかな笑みを浮かべながらブラックホールのように吸いこみ、それを鏡のようにただ反射させているだけ・・・という風にも見えた。もはやあの姿は怪物としか形容しようがない。カリスマとか包容力とはまた別の次元のパフォーマンスだったように思える。
2007-09-10 05:24 | オペラ | Comment(5)
Comment
こんばんわ。なにものにも代え難い経験をされたんですね。Naokoさんの情熱と行動力が有れば、これからももっと素晴らしいオペラを観られるのではないかと。
 僕ははるか昔、メトの東京公演の「愛の妙薬」で見たのが最初で最後のパヴァロッティでした。茶目っ気たっぷりの舞台でした。
守屋 2007/09/10(月) 06:21:49) 編集

Naokoさん、ステキな回顧録、楽しく読ませていただきました。テノール殺しと言われている(出だしが)最初のアリアを余裕で美しく聞かせてくれる歌手はパヴァロッティの他に考えられません。

私が観たたった一度のパヴァロッティの生舞台は、1995年のロイヤル・オペラ「仮面舞踏会」のリッカルド。あの巨漢からは想像できないほどの柔らかな声に驚いたのを覚えてます。ちなみに相手役はデボラ・ヴォイトでした(ふたりとも同じ位の大きさだった)。

パヴァロッティのご冥福をお祈り申し上げます。
ミッツィカスパー 2007/09/11(火) 21:58:27) 編集

守屋さん ミッツィカスパーさん こんにちは

天気が悪くて気温も低くてガッカリの東京から書きこんでおります!

お二人とも十年以上前のパヴァロッティの公演をごらんになっていたんですね。お二人にとっても同じではないかと思いますが、私にとっても一度きりだけど本当に心に残る公演でした・・・

東京バレエ団&ゲストによる「ニジンスキー・プロ」、昨夜の初日を見ました。大変充実した見応えあるプログラムでした。今日これから二日目を見てきます!ご報告は後ほど・・・
Naoko S 2007/09/13(木) 17:20:46) 編集

Naokoさん、日本にいらしてたのですよね~。17日朝9:30からNHKBS2でパヴァロッティの「ラ・ボエーム」が放送されるのはご存知でしたか? ぜひご覧になってからロンドンにお帰りくださいね~。
取り急ぎご連絡まで。
ミッツィカスパー 2007/09/14(金) 21:58:20) 編集

ミッツィカスパーさん TV情報をありがとうございました。現在BSを受信できない伊豆の山奥に来てまして、せっかく教えて頂いたのに見られませんでした・・・残念。また暑さがぶり返してきて喜んでたんですけど、沖縄に台風が近づいてるんですねえ 明後日大阪に移動するんですけど、西日本は避けてくれることを祈るばかりです!
Naoko S 2007/09/17(月) 15:26:03) 編集

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