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見る音楽、聴く絵画
三連休だったこの週末、イングランド南部の海岸沿いにあるChichesterという町に出かけてきました。お目当ては、この町の小さなモダン・アート・ギャラリーで開催中の特別展を見るため。

所はPallant House Gallery、展覧会のタイトルは、"Eye-music: Kandinsky,
Klee and all that jazz"


タイトルを見てピンときた方には、説明の必要もないでしょう。20世紀初頭に、視覚芸術の新たな可能性を模索する上でアイデアと手段を「音楽」に求めた、一群の画家たち。彼等の多くは画家であると同時に音楽家でもあり(広義の意味で)、「音楽こそが最良の教師」(カンディンスキー)という揺るぎない信念を持って、音楽理論・形式を絵画制作に転用する。具体的には音を色彩に置き換え、画面から対象物を取り去って(あるいは対象を簡素化して)より自由・かつ即時性を重視した抽象表現が主流。

・・・で、私自身は常にこのテーマには魅了されてきたのだけど、ある程度知っていると言えて・かつ心底興味(と愛)のある画家はカンディンスキーだけなので、彼自身の言葉で表現して頂くと、たとえば・・・

「・・・色彩は、魂に直接的な影響をあたえる手段である。色彩は鍵盤、目は槌。魂は、多くの弦をもつピアノである。画家は、あれこれの鍵盤をたたいて、合目的的に人間の魂を振動させる、手である。」(『芸術における精神的なもの』 1911年)

この時期の代表的な作家のうち今回ここに集められたのは、カンディンスキーのほかクレー、クプカ、ヤウレンスキー、ドローネー夫妻 (ソニア)、モンドリアン、マティス、ミロ・・・等々。メジャーな名前に加え、見慣れない英国人画家の作品も数点あった。(本来このギャラリーのコレクションは英国の<特にモダン>作家のものがメイン。)

この特別展のことは先週たまたま知って、アクセスできる範囲内でカンディンスキーがらみ・かつ興味あるテーマの展覧会をやっているなら行くしかない!と、矢も盾もたまらず電車に飛び乗ったのですが・・・

往復四時間かけて行った甲斐はありました。大満足というわけではなく、色々言いたいことはあるんですが。

まず、展示数が59とこれだけ壮大なテーマを扱うには十分とは言えないし、十分予想されたこととはいえ英国内から集めたコレクションに依存する度合いが少なくなかった(=新鮮味に欠ける)。カンディンスキーについていえば、このテーマに最もマッチすると思われる時期の彼の絵を持っているレンバッハハウスからもグッゲンハイムからも一枚もきていなかったのは、残念無念と言わざるを得ないし・・・。(まぁそれを言うなら、昨年のテイトでの回顧展にも確かレンバッハハウスからは一枚もきてなかったような記憶があるけど・・・。)

あとは、一部の例外を除き、このテーマで集められた上記画家たちの作品がそれぞれさしたる連関性なく並べられていて、全体に総花的な印象が否めない。(こういう人がいました・ああいう人もいました・・・。)リソースの限られた地方のギャラリー、必ずしも一般的とはいえないテーマ、という条件下では無難な行き方とは言えるかもしれないけれど、私的には特定のアーティスト・グループに焦点をあててもう少し求心力のある展示を望みたかった気も。(要は、カンディンスキー中心で企画作ってくれと言っているだけですね はい。)そして、展覧会タイトルの最後の部分、"all that jazz"と一括りにされた画家たちの部屋は、ちょっと薄っぺらかったなあ。この部分だけで一つのテーマとして成立できる魅力ある題材なのにもったいない。というか、それ故に、これはちょっと手を広げすぎたんじゃないか・・・と思ってしまったり。

(あと、展覧会の内容からは離れるんだけど、ちょっと気になったのが、世間に出回っているこの特別展のリーフレット。表紙に使われてる”売り"の絵がカンディンスキーの「コサックス」なんだけど、これは去年のテイト展でも採用してました。あまり注意せずに見たら、一瞬、「ああなんだ あの展覧会が地方に巡業してるのか」と思う人も出てくるのではなかろうか。こういうのは、明らかなミスでしょうねえ・・・)

・・・と、色々文句書いてますが、それでも、行って良かった・と思えた理由の一つは、まさに上で書いた二点目のお陰で(自己矛盾してますが・・・)、これまで見たことのなかった作家の絵を見られたこと。中でも、これまで実見した記憶のない、ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニスというリトアニアの画家の作品が面白かった。「ソナタ No. 5 - 海のソナタ」と題されたテンペラ画で三部作になっていて、それぞれ「アレグロ」、「アンダンテ」、「フィナーレ」と副題がついている。アレグロでは穏やかで調和のとれた波模様を、アンダンテでは静寂の海に浮かぶ一艘の船、フィナーレでは荒れ狂うビッグ・ウエーブを描写しているのだけど、繊細で緻密な筆致は若干ラスキンを思わせ、その幻想性は象徴派絵画にも通じるような・・・。この方は音楽家でもあったそうですが、音楽形式を素直にそのまま画面に移したアイデアは可愛らしくすらあるのだけど、独特の画風には惹きつけられました。やや興奮度はさがって、初めて見たイギリスの画家たちの作品もそれなりに面白かった。(ジャズ・ミュージシャンで画家のアラン・デイヴィーという人の絵とか・・・)

まぁ何だかんだ言っても、拍手すべきはこの国でこの種の野心的な企画展を開催してくれたという事実。これは素直に喜ばしい。願わくば、今後もさらにこのテーマを掘り下げてより見応えある企画展を見せてほしいものです。私的には共感覚をテーマにした展覧会を見てみたいんだけどなあ・・・。(などと夢想しつつカタログを見ていたら、2年前にそのものズバリの展覧会がロスであったようです。はぁぁ~いいなぁ 行きたかったなあ・・・)

ギャラリー内の小さな部屋で同時に進行していた"Sighting Music"というミニ企画展では、シェーンベルクやジョン・ケージの自筆スコアを展示していて、音楽に詳しい方にはこちらも興味深い内容なのでは。

ちなみにブック・ショップが充実していたのも特筆事項かな。私が訪ねた時にちょうどセールをやっていて、かなりの数の本が軒並み半額になってました。モダン・アート系が大半ですが、本だけでなく小物系やメモラビリア系のものも置いていて充実した品揃え。(色々目移りしたあげく、カルティエ・ブレッソンの大部の写真集を半額でゲットしてきました!)

9月16日迄開催、入場料6.5ポンド。ちなみにこの展覧会、10月にはノリッヂに移動するようです(会場はSainsbury Centre for Visual Arts)。

☆パラント・ハウス・ギャラリーのサイト

http://www.pallant.org.uk/

☆Wikipediaのチュルリョーニス・ページ(作品を見られます)

http://en.wikipedia.org/wiki/Mikalojus_Konstantinas_%C4%8Ciurlionis
2007-08-29 07:26 | アート情報 | Comment(2)
Comment
パウル・クレーにカンディンスキーといった時点で惹かれますよね。
私見ですが、イギリスの美術館は企画展のテーマ付けとそれに沿った展示に長けているような・・・。
ドロ-ネー夫妻の作品など、春に六本木ミッドタウンの国立新美術館のお披露目展示「エトランジェのパリ」展で、やはりミロ、モンドリアン、カンディンスキーらと並べて展示されていたのを思い出しながら拝読しました。
チュルニョーリスのご紹介もありがとうございます。
「フィナーレ」は画像もあり、興味深く拝見しました。
こういう出会いがあるのも企画展の魅力ですね。
大規模な美術館でなくてもこういった意欲的な展示を行おうとする姿勢は評価できると思いますし、Naokoさまのような美術愛好家による来場がそれを裏付けるという成熟した鑑賞者の支持もまた今後に続く良い循環になるのではないか、と思いました。
maria 2007/08/30(木) 07:56:35) 編集


>>パウル・クレーにカンディンスキーといった時点で惹かれますよね。

maria様もお好きですか?(わーい♪)二人とも20世紀の最も重要な画家でありバウハウス以降朋友同志でもあるけれど、私にとっては、クレーはちょっと距離のある画家だったりするのです・・・彼の絵を眺めるのは好きだし著作も面白いし人間としても興味深い方ですけど、あまりに透徹した知性と神経の過敏さを思わせる画風にちょっとついていけなさを感じることがあり・・・何より、彼の絵画についぞ音楽を感じ取ることができないんですよね・・・。まぁ、カンディンスキーを偏愛しすぎてるだけかもしれませんが(笑)。

>>ドロ-ネー夫妻の作品

すみません!勘違いしておりました。ご夫婦の絵を見たと思い込んでいたのですが、奥様の方だけでした(汗)。記事も修正しておきました。

>>六本木ミッドタウンの国立新美術館

ほおー 国立新美術館とは。どういった位置づけの美術館なのでしょうか ちょっと気になります。

チュルリョーニスの絵は紙にテンペラで描かれたものだったのですが、独特の微妙な色合いと震えるような繊細な筆致がカタログでは見事なまでに再現できておらず、ガッカリでした。ウエブ上では尚更厳しいですが、イメージだけでもご覧頂いて・面白いと思って頂けたのならよかったですv。



Naoko S 2007/08/30(木) 09:35:22) 編集

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