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ボリショイ・バレエ 『トリプル・ビル』 UKプレミエ
英国初演の三作品、8月14日と15日の両日見てきました。
“Go for Broke”

Music: “Jeu de Cartes” by Igor Stravinsky
Choreography: Alexei Ratmansky
Designs: Igor Chapurin
Premier: 18 November 2005, Bolshoi Theatre, Moscow

CAST
Maria Alexandrova (14th Aug)/Nina Kaptsova (15th Aug), Svetlana Lunkina, Ekaterina Shipulina, Anastasia Yatsenko, Natalia Osipova, Ekaterina Krysanova, Anastasia Kurkova, Yan Godovsky, Denis Medvedev, Morihiro Iwata, Viacheslav Lopatin, Denis Savin, Anton Savichev, Egor Khromushin, Evgeny Golovin

ボリショイ・ロンドン公演の最終週は、英国初演の三作品から成るミックス・ビルでスタート。幕開けは芸術監督ラトマンスキー振付作品”Go for Broke”。タイトルは「死力を尽くす」「一発勝負に出る」というような意味だが、昨年のマイヤ・プリセツカヤの生誕80年記念公演で上演するため創られた小品。プログラムに出ている振付家のコメントを要訳すると、タイトルの意味は、「ストラヴィンスキーの音楽に振付するのはいつだってギャンブルみたいなもの・・・それがプリセツカヤに捧げる作品なら尚更。持てる物を全て出し尽くすしかない!」。このスコアを使った『カード遊び』はもともとストラヴィンスキーとバランシンの共作・第一弾で、初演は1937年4月、METにて(アメリカン・バレエ)。バランシン版は今は殆ど上演されることがないようだが、ポーカー・ゲームをモチーフにした作品だったよう。ラトマンスキー版では直接カード・ゲームを示唆する振りや演技はなくて純粋に音楽の持ち味を生かした抽象バレエ。

この音楽がなかなか面白くて、軽快なんだけどちょっと曲者。各タブローの導入部分で繰り返されるテーマは勇壮なシンフォニーをパロっているように聴こえるし、有名な楽曲のサワリを所々借用している(ベートーヴェンのシンフォニーやセビリヤの理髪師とか「自作」の春祭とか・・・もっと色々使っていたような)。ラトマンスキーの振付は前半若干フォーサイス風、中盤からはバランシン・モード全開(・・・と私には見えた)で、ストラヴィンスキー/バランシン・コンビへのオマージュが込められてるのかな?という印象。ほとんど全編テンポが早くて、一音一音にパがあてられているかのような振付は踊る人たちには相当大変だと思うけれど、ボリショイ・ダンサーズはしなやかに踊り切っていた。途中ルビーズ風(バランシンのジュエルズ)の振りと仕草が沢山出てきて可笑しかった(エメラルド・モーメンツも若干ありました・・・)。初日のリードの一人・アレクサンドロワのダイナミックで女王様然としたダンスを観ながら、彼女にはルビーズのトール・ガール役が似合うだろうなあ・・・と、また二日目に同じ役を踊ったコケティッシュなカプツォーワには、こちらはリード役がいける、と夢想してしまった。他にはルンキナの晴れやかな表情とクリーンなテクニックが印象的。男性陣で断然目をひいたのはヤン・ゴドフスキー、それから今回のツアー初登場の岩田さんもテクニシャンぶりを披露してくれました。初日に見た時は楽しいけれどインパクトに欠ける、自作をトリプルビルのトップに、ご本尊・マエストロの作品を最後に持ってくるなんて大胆過ぎでは・・・とプログラム構成にクエスチョン・マークをつけたくなったが、二日目にはこれ結構いいんじゃない?と思えた。ボリショイ・バレエ団のダンサー達がいかに踊れる集団であるかを(クラシックに限らずネオクラシックも)見せ付けるには格好の作品。


“Pique Dame”

Music: P. I. Tchaikovsky
Choreography: Roland Petit
Libretto: Roland Petit, based on The Queen of Spades by Alexander Pushkin
Designs: Jean-Michel Wilmotte
Costumes: Luisa Spinatelli
Premier: 26 October 2001, Bolshoi Theatre, Moscow

CAST:
Hermann: Nikolai Tsiskaridze
The Countess: Ilze Liepa
The Young Girl: Svetlana Lunkina (14th Aug) / Nelly Kobakhidze (15th Aug)

プティがボリショイ劇場(ツィスカリーゼとリエパ)のために創作した一幕六場から成るシアトリカルな作品。リブレットも原作をベースにプティが書き、プログラムノートにある作品解釈は、「スペードの女王は闘牛を想起させる・・・闘牛士も牛も最後はともに倒れる」というもの。音楽はチャイコフスキーの同名のオペラ曲ではなく第六交響曲を使っている。(全曲。曲順は替えてある)

数あるプティ作品の中で特別名作と呼べるものではないのでは・・・というのが率直な印象。私的にノレなかったのは、音楽とプティの振付がミスマッチに見えてしまった点が大きい。この音楽(通称「悲愴」交響曲)、そもそも重くてそれ自体ドラマティック(エモーショナル)すぎる。鬱病のドン底で呻吟するような、ハイとローが交互に訪れて出口なし・・・という重さがプティ独特のドラマ性と衝突してしまっているような。群集描写の部分にみられた彼特有の諧謔味もこの音楽とは遠く隔たって相容れないように見えた。(「闘牛」なら当然なのかもしれないけれど、最後の賭博場のシーンはまるでカルメンみたいだった。) 音楽だけ聴く分にはよいのだけど、この音楽を使ったダンス作品を受け入れるのはちょっとしんどいというか・・・まあこれは私個人の問題ですが。あと、この演出・振付からは小説のもつ怪奇小説的・オカルト的な部分(神秘性)が感じられなかったことも大きい。(ほか、主役二人に必ずしも説得力ある振付が与えられていない、作品が長すぎる・群舞のシーンでカットしていい部分がかなりあるのでは?という点で周囲に座っていた常連ファンと意見が一致。)

ヘヴィー級アーティストの主役二人は別の惑星から来たような・周囲とは隔絶したオーラをはなっていてそれだけでも見る価値はあったけれども。やっと見ることのできたツィスカリーゼは、相変わらず圧倒的な存在感・・・脚の調子が悪かったようで動きはやや重かったが舞台姿の美しさに感動した。私的には彼のように存在自体がドラマティックなダンサーは、逆に抽象的・無機質な作品で観てみたいと思ったりした(もちろんバリバリの古典も!)。そしてイルゼ・リエパ!彼女の驚異的な身体表現・・・特に腕の動き、それ自体生き物のように見える幻惑的な表現に驚嘆(蛇のようだった!)。隙の全く無い完璧な立ち居振る舞いと集中力にも脱帽・・・真の芸術家。


“Symphony in C”

Music: Georges Bizet
Choreography: George Balanchine
Bolshoi premiere: 21 April 1999, Boshoi Theatre, Moscow
Staged by: Tatiana Terekhova

CAST:
1st Movement: Anastasia Yatsenko/Dmitri Gudanov
2nd Movement: Svetlana Zakharova/Alexander Volchkov (14th Aug)
Svetlana Lunkina/Artem Shpilevsky (15th Aug)
3rd Movement: Maria Alexandrova/Denis Matvienko
4th Movement: Ekaterina Shipulina/Dmitri Belogolovtsev

ボリショイのInC、さぞや生命力に溢れたイキのいいダンスを見せてくれるだろうと期待していたのだけど、蓋を開けてみるとちょっと大人しめ・・・スピードと祝祭感が今ひとつ。(でも、ひょっとしたら疲労のためだったのかも?)導入部分で特に大事な第一楽章でどれだけノセてくれるかで、印象が左右される部分があるのだけど、ダンサー達の動きのキレがあまり良くなかったような。リードを踊ったヤツェーンコはとてもドラマティックな上体の使い方をする人だけれど、ここではそれがアダになっていたような・・・これで相当減速してました。第二楽章のアダージョは、コール・ドも含めよかったです。特に2日目を踊ったルンキナの音楽性、透明感のある舞は素晴らしかった。そして両日とも第三楽章のアレクサンドロワの弾け方には、これよこれ!とひたすら嬉しくなりました。彼女を見ていてつくづく思ったのは、ダイナミックだけじゃなくて、本当に綺麗な踊りをする人だなあ・・・と。男性はほとんど見せ場がないけれど、群を抜いて美しい踊りを見せてくれたのが第一楽章のグダーノフでした。何度観ても、いつも高揚感と感動を与えてくれるフィナーレの「バレエ讃歌!」のシーンにはやはり興奮したけれど、至福感はイマイチだったかな。

(余談・・・カーテンコールで受け取った花束からバラを一輪引き抜こうとしていたアレクサンドロワ、最初なかなか抜けなかったんだけれど、エイッとばかりムリヤリ抜き取ってマトヴィエンコに捧げていました。可愛い・・・というか、頼もしい~)

ツアー終盤で疲れがたまってくる頃にステージにかけるには極めて野心的なプログラム構成で(観ていたこちらはお腹一杯)、それを見事に踊り切ったボリショイ・ダンサー達の底力にあらためて脱帽、心からの敬意(と愛)を贈ります!
2006-08-17 01:00 | ボリショイ・バレエ | Comment(4)
Comment
こんばんわ。本当にリエパの腕の動きは、凄かったですね。言葉でなんと表現していいのか。ボリショイ・バレエには更に一週間、追加公演をしてもらいたいくらいです。
守屋 2006/08/18(金) 05:51:34) 編集

守屋さん

>>更に一週間、追加公演

素晴らしいアイデアです~~!今宵のドンQ初日、超・ぎゅう詰め満員で大盛況でした。一・二週間滞在を延ばしてもチケット完売間違いなし!
Naoko S 2006/08/18(金) 08:31:45) 編集

ジブロワって、タレントの「千秋」に似ている、と「明るい小川」を観ていたとき感じたんですが。
守屋 2006/08/18(金) 22:50:06) 編集

すっかり浦島なもので千秋さんってどんな方かわからないのですが、私はジブロワを明るい小川で見たときに、昔日本の女優さんで似た人がいたなあ・・・と思いました。ほんわりして可愛いお顔の方ですよね。ドンQでは一転して艶やかなメルセデスに化けていました。
Naoko S 2006/08/20(日) 00:08:09) 編集

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