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ロイヤル・バレエ ミックス・ビル <ダーシー・バッセルの引退公演>(6/8)
CHECKMATE

振付: Ninette de Valois
音楽: Arthur Bliss
デザイン: E. McKnight Kauffer

<キャスト>
The Black Queen: Zenaida Yanowsky
The Red Queen: Alexandra Ansanelli
First Red Knight: Bennet Gartside
Second Red Knight: Martin Harvey
(133rd performance by the RB at the ROH)


SYMPHONIC VARIATIONS

振付: Frederick Ashton
音楽: César Franck
デザイン: Sophie Fedorovitch

<キャスト>
Roberta Marquez, Laura Morera, Belinda Hatley,
Federico Bonelli, Steven McRae, Ludovic Ondiviela
ピアノ: Philip Gammon
(The 249th performance by the RB at the ROH)


SONG OF THE EARTH

振付: Kenneth MacMillan
音楽: Gustav Mahler (“Das Lied von der Erde”)
デザイン: Nicholas Georgiadis

<キャスト>
Darcey Bussell, Gary Avis, Carlos Acosta

指揮: Barry Wordsworth
メゾ・ソプラノ: Catherine Wyn-Rogers
テノール: David Rendall
(The 93rd performance at the ROH)


ロイヤル・バレエの今シーズン最終日、そしてダーシー・バッセルのロイヤル最後の夜。いつものアンフィの指定席に滑り込むと、ん?やけにオーディトリアムが明るい。なぜかというと、目線のまっすぐ先にある、ステージ真上に鎮座まします英王室の紋章にライトがあてられていたからでした。アッシャー君に、どうして?と訊くと、多分バッセルの引退公演だからでしょう・・・とのお答え。特別公演の時っていつもこんなことしていたかしら・・・?

一本目の「チェックメイト」は、タイトルから推察される通り、チェス盤上で繰り広げられる「赤組」と「黒組」の死闘?《より正確には、黒組にさんざんいたぶられる赤組》を描いたバレエ。(注:普通チェスの駒って白と黒だと思うのですが、このバレエの中では赤と黒でした。)

これは、なんと言っていいものか・・・正直言って、私の鑑賞能力と美的受容範囲(好み)を遥かに超えた作品だったので、ノーコメントとすべきでしょう。仮装行列に出てきそうなキッチュな衣装といい、機械的でアクションの感じられない振付といい・・・47分間、かなり辛かった。

続く「シンフォニック・ヴァリエーションズ」はアシュトン振付の20分弱の小品。古典の典雅さと現代的なクールさの同居する抽象作品で、踊るダンサーにはこの上なくデリケートな表現力とクリスタル・クリアな技術力が求められる・・・要はとても難しい作品と言えると思うのですが、この夜のキャストはかなり問題ありと見えました。総じて男性陣の方が女性陣よりは良かった。女性三人のリード・マルケスは、まぁ代役だったので(コジョカルが降板)責めたら可哀想だけど、私的にはミスキャストに見えました。モレーラも然り。彼女の終始きっぱりとした表現は(それは彼女の長所でもあるのだけど)、このダンスには強すぎる。この三人の中では一番はまっていた、というか職人的上手さを見せていたのはハットレーだったけれど、彼女も私の目には何かが違う・・・ヘンな表現ですが、妙に情け深い女という風情で、踊りに透明感というものがない。

男性陣はコボーが抜けた穴をマクレーが埋め、そのマクレーの役をオンディヴィエラが踊りましたが、このタイプの全く異なる二人の若手の競演はなかなか面白かった。マクレー一人が突出しちゃうかな、なんて予想してたんだけど、どうして、オンディヴィエラも負けてませんでした。マクレーは最初のうちちょっと音に遅れることがあって、どうしちゃったの~?と不安になったけど、ソロの技巧の見せ場では達者な踊りを見せてくれました。そして、この二人とはクラスが違うところを見せつけてくれたのが、男性の真ん中を踊ったボネッリ。6人のダンサーの中で、リリカルな表現をみせてくれたのはこの人だけ。つくづく、ボネッリのお相手が都さんだったら・・・と、栓なきことを思わずにはいられず。

カーテンコールでは、この夜限りでロイヤルから引退するベリンダ・ハットレー(ファースト・ソロイスト)が、大きな花束と常連ファンからの暖かい拍手と歓声を受けていました。(大多数のお客さんは、なんで彼女だけこんなに拍手されてるの?と困惑気味のようだったけれど。)客電が点いても一部のファンが拍手をやめないので、一度カーテンのこちら側に出てきてくれたけれど、この後TV中継が入っているせいか、慌しく幕の向うに消えて行きました。ハットレーは英国のバレエファンには深く愛されている人で、ダーシーの引退公演と重なっていなければフラワー・シャワーもあったでしょうに・・・ちょっと気の毒でした。

休憩の後、いよいよこの夜のメイン・イベント・・・「大地の歌」

ケネス・マクミランの1965年振付作品で、私は(多分)初見だったのだけど、目の醒めるような、素晴らしいダンスに吃驚。マクミランってこんなに音楽的な作品を創っていたの!?と、目から鱗がハラハラと落ちっぱなし、興奮しっぱなしの60分間。

マーラーのリーダーで踊られるバレエ作品といえば、私的に真っ先に思い浮かぶのはベジャールの「さすらう若者の歌」。で、どうしても比較しながら見てしまったのだけど、「さすらう~」が濃厚に文学性(言葉)を感じさせる作品なのに対して、こちらは、特に「前半」は純粋に音楽追随型というか、ほとんど素朴といっていいぐらい音楽に寄り添った動き《だけ》で造形されている。(スタイルは違うにもかかわらず、ちょっとバランシンを思い出してしまったほど!)捻りというものが全くなくて、ちょっと素直すぎるんじゃないか、とヒネクレ者の目には見えてしまうほど、でもその無骨さが新鮮。(踊っているダンサー達はさぞ気持ちいいだろうなぁ・・・などと想像しながら見ていたんだけど、実際はどうだったんだろう?)「後半」は、音楽からインスパイアされたドラマが見事な構築性をもって描かれている。

「さすらう~」の歌詞はマーラーの青春時代の苦い経験を元にした自伝的なもので、その主観性がより内省的な作品世界を生んでいる・・・と言えるとすると、こちらはもう少し自由。全六曲、それぞれテーマの異なる・色合いの異なる音楽をテノールとメゾ・ソプラノが交互に独唱。歌詞は中国の古い詩を適宜改変した(!)ものらしい。音楽は時にけだるく、時に甘やかでユーモラス、そして時に重々しく、緊迫したムードだったり。唐詩がテキストのせいか?東洋チックな動きや所作(女性ダンサーが正座していたり、くるみのチャイナみたいなポーズをしたり)が出てくることもあって、私自身は可愛らしいなあと思って見ていたけど、この種の”偽・オリエンタル”風味が嫌いな人もいるかも。

まぁ単純な話、これだけ優れた音楽で踊られるバレエ作品を観る機会はそうそうないので、それだけで胸躍ります。(メゾ・ソプラノのキャサリン・ウィン-ロジャースは先月ROのペレアスとメリザンドに出た人ですが、この方の歌唱は素晴らしかった。)

振付面で・・・先ほど”バランシンを想起させられた”と書いたけど、それにはこの作品の音楽性以外にも理由があって、はっきりと「アポロ」を意識したと思われる振りが何度か出てくるのです。アポロとテレプシコールのpddで、俯いた姿勢のアポロがテレプシコールを”首”でリフトし、テレプシコールが”宇宙遊泳”するシーン。アポロでは確か男性は片膝をついているけど、大地の歌ではなんと、男性は直立姿勢であのリフトを!あと、pddの最後に、アポロがテレプシコールの両手にちょこんと頭をのっける、あれと同じ動作を「大地の歌」では男女の役割逆にやっている。さらに、生れ落ちた直後のアポロがガオーッと吼える場面があるでしょう。あれと同じ表情を「死のメッセンジャー」役がしている。マクミランが遊び心で入れたんだろうか?楽しくて、思わずニヤニヤしながら見てしまった。

作品について・・・公演後プログラム・ノートで見て知ったのですが、この作品が発表された1965年はマクミランにとっては豊穣の年だったようで、ロミオとジュリエットもこの年に初演されています。「大地の歌」は、ロイヤル・オペラ・ハウスのお偉方から、「この楽曲は神聖にして侵さざるべからず(=バレエに使うのは適切でない)」というワケのわからんクレームがついたため上演できず、傷心のマクミランは当時クランコが芸監をしていたシュツットガルト・バレエでこの作品を初演したとか(初演メンバーにはマリシア・ハイデが入っている!)。シュツットガルトでは大成功をおさめ、そのわずか6ヶ月後にはコヴェント・ガーデンでも初演される。(この時のキャストはハイデ、ダウエル、マクリリー。)

私的には、これほどまでに音楽的、かつシンプルに舞踊の喜びを味わわせてくれる作品を創った振付家が、その後なぜ(&如何にして)「マノン」や「マイヤリング」、果ては「ユダの木」・・・などを創作する堕落の道を突き進むに至ったのか、なぜ”こっち”の方向に進んでくれなかったのか?と、非常に興味があります。(私はマクミランの《メロドラマ》・バレエが非っ常~~に苦手なのです!)

さて、肝心のダンサー達ですが、こちらがいい気分で見ているせいか、皆出来がよく見えた(笑)。アンサンブルは特別な&シーズン最後の公演ということでありったけの力を出していたのか?はつらつと踊っていて見ていて気持ちよかった。ソロイストでは第3曲のソロを踊ったマラ・ガレアッツィが出色の出来。実は私この方苦手なんですが、この夜は文句なしに素晴らしかったです。

リードの三人はいずれもclass act!唯一役名のある(”死のメッセンジャー”)アコスタは黒いユニタードに全身を包み、一人だけ最初から目の周りをマスクで覆っている。全編を通じて舞台に死の影をちらつかせる、異界から来たような存在なんだけど、彼はそもそも動きの性質もクオリティも他のダンサー達とは一線を画しているので、この役がぴったり。アンドロイド系の不気味さを醸し出す静かな存在感が印象的だった。

役名は特にないけれど、ダーシーの踊った女性リードとエイヴィスの男性リードは恋人同士の設定に見えた。エイヴィスはテクニック的にはアコスタのpeerではないけれど、表現力とパートナリングは5つ星!運命に翻弄される・ごく普通の、弱い男(人間)という表現が秀逸、そして、パートナーへの《愛》がひしひしと感じられる包容力!

ダーシーは第2曲で登場した直後はやや動きと表情が硬かったように見えたけれど、舞台に一人ぽつんと立っているだけで何かが起こりそう・・・と期待させる圧倒的な存在感。第6曲の悲しみをたたえたソロでは、彼女の表情に目が釘付けに・・・ただ”悲しげ”なのではなく、まるで心の痛みが肉体的苦痛を引き起こしているかのような、沈痛な表情をしていたのです。

しかし、なんといってもこの夜の白眉は、第6曲でダーシーとエイヴィスが踊ったpdd!さきほどちらっと触れた”首リフト”はここで出てくるのですが、タイミングで非常にきわどくて、0.5秒でもずれたらかなり危険なことになりそうな振付。これがピタッ!と完璧に・美しく決まったところから怒涛のドラマに突入。テクニカルな山場を越えたことで弾みがついたように二人の踊りがより大胆になり勢いがついて、一つ一つの動きから感情がとめどなく溢れ出す、素晴らしいダンス・・・えーっ えーっ!と、心臓ドキドキ、一瞬たりとも見逃すまじと瞬きせず・息もせずに、食い入るように舞台を見つめていました。これこそ、パ・ド・ドゥ、真のラヴ・デュエットだ!と心中叫びながら・・・。

私にとってダーシー・バッセルというダンサーの最大の魅力は、大舞台で普段よりもさらに大胆になりエキサイティングな踊りを見せてくれることなのですが、この時の彼女はまさにそれ。そして、このダーシーの大胆さを可能にしたのは、パートナーのエイヴィス!この夜のゲイリー・エイヴィス、一世一代の名舞台を見せてくれた、と言ってもいいのではなかろうか。私的にはこの方に特大の花束3つぐらい献呈したい気分でした。

最後は、男(エイヴィス)が抵抗むなしく死のメッセンジャーに屈して、自ら死神となって恋人(バッセル)を迎えに来る(・・・という風に見えた)。そこに死のメッセンジャーも加わり、三人で未知の世界にむけて旅立つことを示唆する場面で幕。(奇しくも最後は「さすらう~」と同様、主人公は運命/死に連れ去られてしまう・・・)

この作品にダーシーのこめたメッセージ(”さようなら”)はストレートに観客に伝わり、エモーショナルな反応を引き起こしました。全く見事な引退公演で、唯一の心残りは、ダーシー・バッセルの踊る「大地の歌」を見るのはこれが最初で最後、ということだけ・・・。
2007-06-12 07:07 | ロイヤル・バレエ | Comment(2)
Comment
Naokoさん、こんにちは。詳細且つ明快なレポートをありがとうございます~。カーテンコールのフォト(ご紹介ありがとうございました。)もYou Tubeの映像も見ました!(有り難や~。) これはPCの小さな窓で見ているだけでも、涙がこみ上げてきますね・・・。

高い芸術性を備えた素晴らしい舞台と感動的なカーテンコール、ダンサーとしてこの上ないフェアウェルとなりましたね。あぁ、ダーシーは本当に引退してしまったのですね~。これからの人生も実り多きものとなりますよう心からお祈りする次第であります。

この公演の放送ですが、日本でもやってくれないもんでしょうか。大きい画面でちゃんと見たいなぁ。
mizuko 2007/06/13(水) 00:31:54) 編集


mizukoさん こんにちは

あの夜の感動を少しでも分かち合っていただけたなら嬉しいですわ。イレールの時も勿論そうでしたが、引退公演というエモーショナルなイベントは、後を引きますね・・・今でも金曜の夜の余韻を引き摺っている私です。

今日やっと録画してあったビデオを見たのですが、これは番組としてとても充実しているので(前半は特にジョナサンがgood~♪)、ほんとに、できることなら是非日本のバレエファンにも見ていただきたいです!
Naoko S 2007/06/13(水) 08:59:13) 編集

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