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ボリショイ・バレエ 『明るい小川』 UKプレミエ
今夏のボリショイ・ロンドン・ツアーで最も楽しみにしていた演目の一つ、『明るい小川』。UKプレミエと、続く2日目を見てきました。
“The Bright Stream”

Music: Dmitri Shostakovich
Libretto: Adrian Piotrovsky and Fyodor Lupukhov
Choreography: Alexei Ratmansky
Designs: Boris Messerer

Premiere: 18 April 2003, Boshoi Theatre, Moscow

CAST

10th August
Zina: Svetlana Lunkina
Pyotr: Yuri Klevtsov
The Ballerina: Maria Alexandrova
The Classical Dancer: Sergei Filin
The Accordion-player: Gennady Yanin
The Old Dacha-dweller: Alexei Loparevich
The Old Dacha-dweller's 'anxious-to-be-younger-than-she-is' Wife: Irina Zibrova
Galya (a schoolgirl): Anastasia Stashkevich
Gavrilych (an old farmer): Egor Simachev
The Milkmaid: Anastasia Yatsenko
The Tractor Driver: Alexander Petukhov
Highlander from the Caucasus Mountains: Georgy Geraskin

11th August
Zina: Anastasia Yatsenko
Pyotr: Yuri Klevtsov
The Ballerina: Ekaterina Shipulina
The Classical Dancer: Ruslan Skvortsov
The Milkmaid: Xenia Sorokina
<以下8月10日と同じ>

ツアー10日目の一昨日・明るい小川の初日が、私的にはこれまでで最高の夜となりました!

いやはやもう、このバレエ、面白いのなんの。コメディとはきいていたけど、こんなに笑わせてくれて、かつ見応えある作品とは予想だにできず。芸監&振付家のラトマンスキー、タダ者ではない??

話の筋はごく単純で他愛ない。『明るい小川』という集団農場の収穫祭に首都から招かれたアーティストたちが巻き起こすちょっとした騒動。客人の一人・バレリーナと農場の芸能プロモ担当のジーナは実は昔バレエ学校で共に学んだ間柄。スター・バレリーナにすっかりのぼせ上るジーナの夫・ピョートル。傷ついたジーナに、旧友のバレリーナは彼に一泡吹かせてやろうとけしかける。妻が優れたバレエ・ダンサーとは露知らない夫はバレリーナの衣装で顔を隠した妻をバレリーナと思い込んでロマンティックなpddを踊る。アコーディオン奏者は女学生をたぶらかそうとしてこれまたハメられ、また、客人に魅せられた老夫婦はそれぞれ秘密で逢引をたくらむが、彼等の前に姿を現したのは男装したバレリーナと女装したパートナー。そうと気づかず老夫婦はランデブーを楽しもうとするが両ペアがハチ合わせしてしまい、老妻は怒り狂って夫を追いかけ回す。最後のシーンは収穫祭。マスクをつけて双子のようにそっくりの二人のバレリーナが踊っている。困惑するピョートル。踊り終わって顔を見せると、一人はなんと妻・ジーナだった。自分の愚かさを恥じ、許しを乞うピョートル。全員で収穫を祝うダンス・シーンで幕。

笑いの質は素朴でドタバタ劇に通じる類のもの。ショスタコーヴィチとラトマンスキーの組み合わせなのでドライでインテレクチュアルな感じかな・・・なんてかすかに予想してたんだけど、見事に外れ。ただ、素朴といってもまだ若いラトマンスキーのこと、さすがにセンスが現代的でスマート。たんに歴史的作品を復活させました・・・的な古臭さはなくて、今の時代に充分通用するスピード感と軽さがある。(これは彼が振付けたマリインスキーのシンデレラにも感じたことですが、この方非常に頭がいいのでしょうね。) 肝心のダンスは、フォーク、社交ダンス・・・と色々盛り込んでるけど、主体は勿論クラシック。シンデレラやミドル・デュオではもう少し明確だった彼自身のダンス言語はこの作品では特に強くは感じられなかったけれど、クラシック・バレエ・ファンにはわかりやすい、<どこかで見たような>振付満載で見やすい。初めて全編通して聴いたショスタコーヴィチのスコアは親しみやすいメロディーが多く独特のウィットに富んでいて、ダンス音楽としてとても面白くて魅力がある。ラトマンスキーがまずはこの音楽に触発されて再演を思いついた・・・というのも頷ける。セットは、特に一幕が印象的だった。収穫の秋を思わせる黄金色一色にステージが輝いていて、素朴派の絵画風に描かれた麦や果物が田舎の豊穣を思わせる。麦畑の中をオブジェ風の耕運機(?)が飛んでいったり、蒸気機関車が走ったり、と小道具の使い方も利いていて楽しい。女の子達は色とりどりの花柄のワンピースに頭には三角巾姿でとってもチャーミング。(このワンピースの色と柄がお洒落で素敵でした。)

さて肝心のダンサー陣ですが、まずはこれ以上は望めないであろうと思われる初日のキャスト。ジーナとピョートル、バレリーナとパートナーの4人は対等の主役と位置づけられてるようなんだけど、それぞれルンキナ、クレフツォフ、アレクサンドロワ、フィーリン、皆ハマリ役で各人の個性と魅力が炸裂!ルンキナは表情がとても豊かで愛らしい若妻の雰囲気がよく出ていた。シンプルな白いワンピースで可憐に踊る一幕と、ゴージャスなバレリーナに扮してスター性抜群に踊る二幕で表現がしっかり変わっていたのには感心。ジーナの夫役・クレフツォフはベテランらしく手堅い踊り&田舎の若者のダサさが上手いこと出ていて好演。(ピョートルって70年代風の衣装で出てくるんだけれど、上はペラペラのナイロン風の安っぽいシャツ・下は白いズボン・・・っていうイケてない格好。これが妙に彼に似合ってるの・・・)

しかし、何と言ってもステージに最高のインパクトと高揚感をもたらしてくれたのは、アレクサンドロワ&フィーリン!この夜のマーシャ(以下、僭越ながらこの愛称で呼ばせて頂きます)はノリノリで、一幕の登場シーンからディーヴァ・オーラをはなち、テンション高くてお愛想笑い一つも凄みと迫力があってちょっとコワい。元旧友二人が出会い、「貴方は踊りを忘れちゃったの?」「ううん、忘れてないわよ まだこんなに踊れるのよ!」と技を見せ合う微笑ましいタブローではマーシャとルンキナのコントラストが抜群に効果的。バレリーナ役の最大の見せ場の一つが一幕、農民の男達が素朴で力強いダンスを披露するシーン。最初は見ているだけなんだけど、じっとしていられない・私にも踊らせて!とばかりコーダでバレリーナがグラン・ジュテで乱入する時の凄さたるや・・・あの高さ、シャープさ、力強さ!並みの男のダンサーは足元にも及ばない迫力なんだけど、粗雑さはまるでなくて形としてはとても美しい。彼女の大きな瞳が生き生きと輝いて雄弁で、コミカルな演技も堂に入っていた。

二幕では、男装したバレリーナが一幕でパートナーの男性が踊ったのと同じヴァリエーションを踊るシーンがある。これがまたカッコよくて、エレガントなフィーリンに比べるとマーシャの方がダイナミックで男性的なくらい。(あくまで踊りは、です。男装した彼女はかえって女っぽく見えてそこが素敵だった。フィーリンも、女装したら男っぽく見えたのよね・・・。2日目のキャストは、シプーリナは男勝りの女の子に、スクワルツォフはちょっとなよっと女っぽく見えました。) エネルギッシュでダイナミックなダンスと人間味溢れるキャラクターをあわせもつアレクサンドロワは、私的には「これがボリショイのプリマ!」と最も強く感じさせてくれるバレリーナ。この夜はそんな彼女の魅力全開で、ファンとしては大満足でした。

えー さて、ここから先、フィーリン祭りの続きです~。

まず初めに、断言させて頂きます。セルゲイ・フィーリン・ファンの貴方、『明るい小川』を踊るフィーリンを、何があっても一度はご覧になるべきです!なにせこの作品ではノーブル&エレガント&チャーミングないつものフィーリンに加え、女装してポワントワークを披露する彼の姿を見られるのですから・・・一幕のダンサー役ではいつもの、エレガントなノーブル・ダンサーの顔なのですが、衣装が滅茶苦茶可愛い!白いチビ襟のシャツに細いネクタイにカーキ色のジャケット&ニッカーボッカー、ワインレッドのハイソックスにベレー帽姿(ベレー帽がとってもお似合いで素敵・・・ほんとにハンサムよねえ)。二幕のシルフィード役では、女性ダンサー顔負けの優美なポール・ド・ブラを披露。フィーリンって実は三枚目なのかな?この役を心底楽しんでることがよくわかる、すごく入り込んでる顔の表情。後半、もうやってらんねーよ!とばかり大股開きで座り込んで酒をあおる粗野な姿には場内大爆笑。

マーシャとのチームワークは抜群!白鳥でも感じたんだけれど、この二人はダンサーとしての個性・色が違うので、一緒に踊るとそのコントラストが面白い。二幕の最後の部分でちらりとフィーリンとジーナ役のルンキナが踊る部分があるんだけれど、より近いタイプのこの二人が並ぶと絵としては綺麗なんだけど、普通すぎてつまんない・・・と思ってしまったほど。

その他、上に書いたキャスト表で名前をあげたダンサー達は皆素晴らしかったけれど、特筆すべきはヤーニン。もう、この人のキャラクターの可笑しさと踊りの凄さって何なの~。二幕で女学生を口説こうとするシーン、コッテコテのイヤラしい親父風の振りがあるんだけれど、ここがもう、素晴らしく上手い。彼は舞台に登場しただけでそこはかとなく笑いを誘ってくれるタイプなんだけれど、踊らせるとプリンシパル顔負けの身体能力の凄さ。マリインスキーのイワノフもそうだけれど、優れたキャラクター・ダンサーはクラシック・バレエ・カンパニーの生命線だなあ・・・とつくづく感じさせられた。老夫婦役を演じたキャラクター・ダンサーズのジブロヴァとロパレヴィッチはとぼけた風情がなんとも言えずいい味を出していて、とてもラブリーなコンビだった。

2日目はクレフツォフ以外はプリンシパル不在で、スター性ではかなり落ちる布陣だったけれど、それでも充分楽しませてくれました。私が特に好きだったのはジーナ役のヤツェーンコ。しっとり大人の女性の美しさを漂わせた彼女はとてもフェミニンなジーナ。ベテラン同士のクレフツォフと組むと、倦怠期の夫婦、という風情が出て説得力があった。シプーリナは元気一杯、エネルギッシュだったけれど演技面ではちょっとフラットな印象。スクワルツォフは二幕のシルフィード役がよかった。困ったような上目遣いでなんとも憎めない表情、パ・ド・ブレはフィーリンより長くて上手かった(笑)。

ダンサー達は皆すごく楽しそうに踊って・演技していて、ハッピーな空気が客席にも感染したかのように、上演中クスクス笑いどころか盛大な笑い声が出ていて楽しいムードだった。2日目はちょっと空席も目立ったけれど、両日とも観客のウケは非常によくて、ballet.coのフォーラムでは早くもDVD化を熱望する声も!イギリス人はこの手の作品は好きだし(男の女装もあるし!)レビューもきっと良いんじゃないかな。来年のツアーでの再演希望ナンバー・ワンの作品です!


* 舞台写真はこちらballet.coで見られます!

http://www.ballet.co.uk/dcforum/DCForumID12/91.html#7
2006-08-13 06:58 | ボリショイ・バレエ | Comment(4)
Comment
>男の女装もあるし!
 本当にイギリス人って、女装が好きですよね。

 僕も初日をみました。Naoko Sさんと違って、第2幕の構成にはちょっと辛いですが、仰るとおり、アレクサンドロワとフィーリンの素晴らしさは、忘れられないですね。特にアレクサンドロワのジュテの高さには、吃驚しましたよ。
守屋 2006/08/13(日) 20:12:58) 編集

マーシャ、とても男前(!)でしたねぇ。あの高くて弾けるグラン・ジュテは本当に驚きです。スクワルツォフ、白鳥の王子の時とは人が変わった様に生き生きしてましたよね。来週の白鳥もこの調子で精魂込めてお願いします(笑)!開幕前に楽屋口の横を通った時、ダンサー数人があの70年代風の格好でタバコを吸っていたので「ロシアではこんなファッションが復活してるのかなぁ」と思ったのですが、あれはお衣装だったのですね。さすがにあれが私服である訳ないか...個人的にはコミック・バレエはあまり得意ではないのですが、めったに見ることのないソヴィエト時代の作品を垣間見れたと言う事で、貴重な体験でした。
Partita 2006/08/14(月) 02:54:45) 編集

守屋さん 2幕ダメでしたか。私はもうおかしくっておかしくって周りと一緒にゲラゲラ笑いながら見てました。散々笑わせてもらったお陰で、免疫力が高まった気がします!(笑)

Partitaさん 「男前」!まさに、ですねえ。初日の終演後、私と同様大喜びしていたバレエ・ファンが、「フィーリンは引退したあともTrocksでの輝かしい第二のキャリアが待っている!」と言うので、思わず、「マーシャも男気のよさをかわれてTrocksの名誉団員<女性で唯一の>になれるわよね!」と応じてしまいました。彼女のキトリがすっごく楽しみです!
Naoko S 2006/08/14(月) 07:00:00) 編集

週が明けてレビューが出揃いつつあります。各紙ほぼ絶賛、ballet.coのフォーラムでも非常に好意的。今日FTとテレグラフの評を読みましたが、後者のクリティック・Ismene Brownのレビューの書き出しは、「今年の"バレエ作品賞"(というものがあれば)に選ばれる可能性大、賭けてもいい!長年の劇場通いの中で最も楽しめた夜だった」、というもの。この方、アレクサンドロワのことを「プリセツカヤの真の後継者」と書かれていて、思わずおおーっと反応してしまいました。本国ロシアのバレエファン・評論家の見方はどうなんでしょうね?気になります。
Naoko S 2006/08/15(火) 09:16:03) 編集

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