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ロイヤル・オペラ 「ペレアスとメリザンド」(5/11)
本当は来週見に行く予定だったのだけど、初日のチケットを持っていた友人からスワップ依頼があり、一昨夜急遽鑑賞して来ました。初めて見るオペラで、音楽を聴いたこともなければシノプシスも頭に入っていない状態で見たのですが(よくあることですが・・・)、とっても面白かった~。

音楽: クロード・ドビュッシー
台本: モーリス・メーテルリンクの戯曲「ペレアスとメリザンド」をベースとした5幕のオペラ

指揮: サイモン・ラトル
演出: スタニスラス・ノルデ
デザイン: エマニュエル・クロルス
衣装: ラウル・フェルナンデス
(ザルツブルグ・イースターフェスティヴァルとの共作)
The 64th performance at the ROH

<キャスト>

メリザンド: アンゲリカ・キルヒシュラーガー
ペレアス(アルモンド国の王子ゴローの異父弟): サイモン・キーンリィサイド
ゴロー(アルモンド国の王子・ペレアスの異父兄): ジェラルド・フィンリー
ジュヌヴィエーヴ(ペレアスとゴローの母): キャサリン・ウィン-ロジャース
アルケル(アルモンド国王・ペレアスとゴローの祖父): ロバート・ロイド
イニョルド(ゴローの先妻との間の息子): ジョージ・ロングワース


なんとも不思議なオペラ・・・少なくともこれまで接してきたオペラ作品のどれとも似ていない。朗々と歌い上げるアリアがあるわけでなく、オペラ的な劇画チックな演劇性に富んでいるわけでもなく・・・オケの演奏は歌手の(歌うというよりは)語る言葉にぴったり寄り添って対等の関係・・・というか、むしろこっちの方が主役なのではないか、という印象すらあり。楽劇というよりは、むしろ楽”詩”と呼びたくなるような作品だった(そんな言葉ないけど・・・)。

ここで聴ける音楽と言葉、その純粋な美しさと幻想性もさることながら、何より驚き・かつ感激したのは、両者の「関係」。言葉の喚起するイメージというものをこれほど的確に表現し、より広がりを与えることのできる音楽があるのか・・・と、そのことに打たれた。不協和音が印象的で全体のトーンとしては沈鬱かつミステリアスな音楽で、最初のうちは単調に聴こえる時もあったけれど、一旦面白さに気づくやこの”未知との遭遇”にどんどん引き込まれていった。

音楽と言葉の関係・・・たとえば、このリブレットには「水」に関わる言葉・単語が多く登場する。森の中の水辺、井戸、海、洞窟の底の水・・・音楽家のパレットにのせられた絵の具の色はさほど多くないけれど、その筆遣いは陰影に富み、微妙な明暗を使い分けていて、水がうつろい、うねり、ゆらめくさまが目に浮かぶような「音」を「描いて」いる。

このほか多用される言葉に、「光」、「闇」、「影」、そして「扉」etc...があった。何気なく使われているけれど、音楽とのカップリングで聴くといちいち引き止められる力があって、これらの単語には何か暗喩があるのだろうか?と想像力を掻き立てられる。リブレットは、恐らく原作にかなり忠実なのだろう、お伽噺特有の簡潔性と神秘性が保たれたもの。(状況説明的だったり、心理劇風にアレンジしたりはしていない。)登場人物の語る言葉は簡潔だが時に謎めいていて(特にメリザンド)、無邪気なのかと思いきやその裏に鋭さが潜んでいそうでもあり・・・と、見る者に解釈の自由を与えるスリリングなもの。

表向きは童話的とすらいえるお伽噺で、端的に言ってしまえばペレアスとメリザンドの禁断の恋が招いた悲劇、ということになるのだけど、不思議とさほど劇的でも、訓話めいてもいない。始めから終わりまで一貫して静けさと神秘性が舞台を支配していて、その均衡が破られるのは、登場人物の中でほとんど唯一の人間臭い(オペラ的)キャラクターのゴローが妻の不貞を確信して怒り狂う場面と、弟を殺害する場面。

作品に神秘性を与えている最大の要素はメリザンド。この出自不明で背丈よりも長い髪(ラプンツェル!)を持つ美少女はファム・ファタール的存在と言えないこともない。とらえどころがなく、生身の女性というよりは妖精とか、ロマン主義の作家たちが創造した夢の存在のようにみえる。(メリザンドと水の親近性を感じさせるシーンがあって、ふとウンディーネを思い出したり・・・)彼女の謎めいた雰囲気と美しさにまずはゴローが魅かれ、弟のペレアスも・・・彼等の祖父で国王のアルケルですら一瞬よろめきそうになるほど。

メリザンドとペレアスがいつ恋に落ちたのか、観客の目にははっきりとはわからない。もしかしたら一目惚れだったのかもしれないし、徐々に恋心を募らせたのかもしれない。彼等はなかなか感情を表に出さず、ただ二人の間に何らかの共有体験が静かに進行していることが、そこはかとなく感じられるだけだ。(二人が初めてはっきりと互いの恋心を打ち明けるシーンで、「いつから僕を好きになったの?」と聞くペレアスに、「初めて会ったときから」とメリザンドが<珍しく>きっぱり答えるシーンがあるけれど、これも額面どおりに受け取っていいものか、見る者を翻弄する。彼女はその後、「私は嘘をついたりしないわ・・・貴方のお兄さん以外の人には」と言ったりするのだ!)

全幕中最も甘美なシーンは、夜空の下での偶発的なランデヴー。高い塔の窓から身を乗り出すメリザンドの美しさに魅入られたペレアスが、もっと君の姿を見たい・その長い髪に触れさせてと懇願する。塔から垂れ下がるメリザンドの長い髪を、まるで彼女自身がそこにいるかのように夢中で愛撫するペレアス。エクスタシーに溺れるペレアスの語り(歌?)は、なんともエロティックで美しかった。(ちなみにこの時点ではメリザンドのペレアスに対する気持ちは依然定かでない。ペレアスの懇願に応えはするが、戸惑いを隠せず、髪を離してと拒否の態度を見せる。)

その場に人の現れる気配がして、慌てて髪を引き上げようとするが、一房が木の枝に引っかかって取れない。現れたのはゴローで、彼はしっかりペレアスの「戯れ」を目撃していたが、「まったく二人とも子供だな」と苦笑して、ペレアスとその場を離れる。ゴローが弟を諌める次の台詞は、非常に暗示的だった。「メリザンドはまだ子供だ・・・面倒を見てくれる存在が必要なんだよ(=それが自分)。それに彼女はこれから母になるかもしれない。お前は彼女より年上なんだからあんな戯れは金輪際慎むように」というような内容。(・・・と、ここでは物分りのいい大人の態度で弟を諌める兄が次の場面では嫉妬に狂い、自制できなくなる。)「二人は子供」というのは本当で、それがこの物語の悲劇の本質なのではないか・・・と、ふと思った。(自分の欲望「だけ」に忠実な子供のエゴと大人の世界の論理の衝突・・・)

この点で、私的には主役ペアはごく年若いキャストで見たかった気がした。キルヒシュラーガーとキーンリィサイドに格別不満があったわけではなくて、恐らく初めて見た作品でここまで楽しませてもらえたのは彼等に負うところが大きかったのだろうとは思うのだけど。二人とも非常に有能なパフォーマーではあったけれど、であるが故に脆さとか繊細さはあまり感じられず・・・キルヒシュラーガーの清楚な顔立ちはこの役には有利だし、ミステリアスな雰囲気もあったけれど、いかんせん私の目にはやや強すぎた。(それからオペラど素人の暴言ですが、ペレアスってテナーがやってはいけないのかなぁ?私的にはこの役は断然テナーのイメージなんだけど・・・)

ゴロー役のフィンリーは、特に良くも悪くもなく・・・素晴らしかったのは、彼の息子・イニョルド役のジョージ・ロングワース君!何歳ぐらいかしら もう可愛いのなんの・・・イニョルドは慕っているペレアスとメリザンドの二人の関係を父親から根堀り葉堀り詰問され、挙句「覗き」までさせられるのだけど、この時の脅える演技が真に迫っていたし、何より彼の美しいボーイソプラノはこの作品世界にぴったりと嵌って、落ち着きがよかった。

ラトル率いる「主役」のオケは良かったと思います。微妙で繊細な表現にはっとさせられる瞬間もあったし、3幕の最後、部屋の中でじっと見つめ合うペレアスとメリザンド、それを覗き見させられたイニョルドが怖がって逃げ出しゴローの怒りが爆発するフォルテシモの場面での弦の劇的な響きは素晴らしかった。

演出は当世流行の?ミニマリスティックなもので、セットと衣装もそれに準じたもの。美術関係はまぁ好みの問題としても、私的にどうしても違和感をおぼえるのは「振付」部分。ヘンに能の影響を受けているかのように概して歌手の動きは抑制されていて、身体の動きの自由を奪われたら歌唱にも影響するのではないか、と心配になることが度々。

セットは非常にエコノミカルで、数枚のスクリーンを開閉して使っていて(開くと屏風風になってそこに文字が書かれていたり、レリーフが彫られていたりする)、基本的に全てのアクションはその前で起きる。舞台上で使われている色は、このスクリーン、衣装とも大雑把に言ってしまえば白と赤の二色のみ(それに影としてのダークグレー)。衣装替えはせず、メリザンドは登場シーンから真紅のシルクサテンの胸元がVに開いたシックなドレス。後半、彼女の「運命の女度」が加速度的に上がっていくシーンではバックのスクリーンも真っ赤に染められて、メリザンドを表す色として使われていたのだろうけど、私的にはこれはちょっと大人すぎ・強すぎた。

一方のアルモンド国の色は白(パールホワイト。スクリーンの色も蛍光の白で目がチカチカした・・・)。衣装は・・・これがすごいんですわ なんともはや。アルモンド国の人として最初に舞台に登場するのはペレアスとゴローの母・ジュヌヴィエーヴなんですが、出てくるや、??ミョーなジャンプスーツ着てるなぁ・・・という不審は続くゴローの登場で決定的に。おお、これは、EW&F@宇宙のファンタジーではないか~!!パールホワイトのサテンのジャンプスーツで上半身にはスパンコールやらクリスタルが刺繍してあって、アースそのもの~!で、よく見るとパンツ部分は太腿が逆三角形に膨らんでいて、こっちは若干MCハマーのパラシュートパンツを思い出させる(古いっ!)。もう、爆笑しそうになってしまいましたよ。大体オペラ歌手というのは太目の人達が多いわけで、彼等がこんな”ファンタジー・スーツ”を着た日には・・・。皆さん納得してお召しになっていたんでしょうかね?(よく拒否権発動しないなぁ・・・と感心。)

カーテンコールの盛り上がりは特別凄いというわけではなく、コヴェント・ガーデンではまぁ普通のレベル。最も盛んな拍手を浴びていたのはラトルとオケだったような印象が。初日ということでプロダクション・チームも登場しましたが、この方々にはアンフィの一角からブーイングが飛んでいました。
2007-05-14 07:16 | オペラ | Comment(4)
Comment
「水」を通奏低音として、運命に流される人々を描いた幻想的なドラマ。ドビュッシーの抽象的で揺らぎときらめきを感じさせる作風に合っていて美しいですね。

Naoko様のレポを拝見して、クラクラするような甘美な幻想的な世界に惹き込まれました。
確かに歌手のヴィジュアルとの兼ね合いは難しそう・・・。
キルヒシュラーガーとキーンリィサイドとは、歌手としては聴きたい人たちですけどね。

演出・・の中で、衣装には読ませていただいて?????!!と疑問符の嵐。
わたくしがこの音楽に持っているイメージをことごとく覆す造形と色のようで・・・。
ファンタジー・スーツとは良く命名なさいましたね!

あぁ、この曲を聴きかえしたくなりました・・・。
ジョージ・ロングワース君だけ傍らにおいて(爆)



maria 2007/05/15(火) 05:32:24) 編集


maria様はこのオペラ、お気に入りの作品の一つですか?私は初めて聴いて、本当にもうびっくりしましたよ・・・このトシになってもあらたに感動できるものがあるってつくづく貴重で有難いことだ、と感じ入っております(笑)。

>>演出・・の中で、衣装には読ませていただいて?????!!と疑問符の嵐。
わたくしがこの音楽に持っているイメージをことごとく覆す造形と色のようで・・・。

一部の観客からのあのブーイングは、ほぼ衣装デザインに向けられたものではなかったか、と・・・(笑)。でもこのプロダクション、mariaさんにも是非ご覧になって頂きたいなあ。

>>ジョージ・ロングワース君だけ傍らにおいて(爆)

ジョージ君、ほんとにほんとに良かったですよ~~。ファンタジー・スーツを難なく着こなしていたのも彼だけでしたわ(笑)。
Naoko S 2007/05/15(火) 08:15:32) 編集

たった今、ロイヤルから戻ってきました。圧倒されました。こんなオペラがまだあったんだ、というのが印象です。メインの3人は既に他のオペラやリサイタルで経験済みですが、フィンリーは、僕にとっては今晩が彼のベストでした。勿論、キルヒシュラーガーとキンリーサイドにも満足です。
 ところで、記憶違いでなければ、本当は今週の土曜日に観にいかれる予定だったんですよね。気に入られたジョージ・ロングワース君は、前半の3回のみ、つまり今日までの出演でした。よかったですね。
守屋 2007/05/17(木) 07:29:13) 編集


P&M、守屋さんも楽しまれたご様子ですね。

>>ところで、記憶違いでなければ、本当は今週の土曜日に観にいかれる予定だったんですよね。気に入られたジョージ・ロングワース君は、前半の3回のみ、つまり今日までの出演でした。よかったですね。

そうです、前置きにも書きましたが急遽友人とチケットをスワップすることになり初日に見ました。しかしジョージ君が昨日までの登板だったとは!あらためて、初日に見ておいてよかった~~。

ところで守屋さん、ブログを始められたんですね!タイトルが凄いので一瞬ひいてしまいましたが、Love&Hateというのは個人的リレーションシップのことではなくてロンドンとの関係のことだったんですね~。(なーんだ・・・とちょっとがっかりしたりして・笑)今後も時々お邪魔させて頂きますね。
Naoko S 2007/05/18(金) 06:27:14) 編集

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