マリインスキー・バレエ 「オール・スター・ガラ」
マリインスキー・バレエ 「オール・スター・ガラ」
2006年12月4日 東京文化会館


☆ レベランス (振付:デイヴィッド・ドウソン)
ダリア・パヴレンコ、ソフィヤ・グーメロワ、ヤナ・セーリナ、アレクサンドル・セルゲーエフ、ミハイル・ロブーヒン、マキシム・チャシチェゴーロフ

☆ 薔薇の精 (振付:ミハイル・フォーキン)
ダリア・スホルーコワ、イーゴリ・コールプ

☆ タリスマンpdd (振付:マリウス・プティパ)
エカテリーナ・オスモールキナ、ミハイル・ロブーヒン

☆ ロミオとジュリエット~バルコニーのpdd (振付:レオニード・ラヴロフスキー)
イリーナ・ゴールプ、ウラジーミル・シクリャローフ

☆ グラン・パ・クラシック (振付:ヴィクトール・グゾフスキー)
ヴィクトリア・テリョーシキナ、レオニード・サラファーノフ

☆ 眠れる森の美女 ローズ・アダージョ (原振付:マリウス・プティパ 改訂振付:コンスタンチン・セルゲーエフ)
ディアナ・ヴィシニョーワ

☆ パヴロワとチェケッティ (振付:ジョン・ノイマイヤー)
ウリヤーナ・ロパートキナ、イーゴリ・コールプ

☆ チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ (振付:ジョージ・バランシン)
オレシア・ノーヴィコワ、アンドリアン・ファジェーエフ

☆ エチュード (振付:ハラルド・ランダー)
アリーナ・ソーモワ、レオニード・サラファーノフ、ウラジーミル・シクリャローフ


6年前もそうだったけれど、このバレエ団の場合、「オールスターガラ」は現状トップのプリンシパル勢揃い、を意味するのではなくて、「明日の」スター<期待値込み>・お披露目公演なんですよねえ。確かにいずれ劣らぬ才能あるダンサー達ばかりだけれど、(前回も感じたように)私的にはベテラン勢も加えてほしかったなあ・・・ 若さを前面に押し出すプログラム構成はそれはそれで面白いけど、どうにも印象が軽い&薄い。私が心から楽しめたのはグラン・パ・クラシックとパヴロワとチェケッティのみ・・・なので、感想もこの二演目に思いっきり偏っています。

まずは「グラン・パ・クラシック」。

・・・驚きました・興奮しました・感服しました ヴィクトリア・テリョーシキナ!

実はこのガラ公演見るべきかどうか迷っていたのだけど、ロパートキナ・ガラのパキータでダントツに鮮やかなダンスを魅せてくれたテリョーシキナをこの演目で見られるなら・・・と心が動き、行くことにしたのでした。その期待を裏切られないばかりか・・・

いやはやもう、参りました。彼女はいつの間にこんなに凄いバレリーナになっていたの?古典のアカデミック・スタイルを完璧にものしているだけでなく、そこはかとなく漂うディーヴァのオーラ、何より凄いのは客席とのコミュニケーションの取り方・・・その見事さ。観客の反応を掌握しつつ期待をしっかり受けとめ、それを喜びにかえて還元することのできる、寛大なダンサー。この若さで既に大プリマの風格すら漂わせ・・・マリインスキーの伝統が脈々と生み出す才能、といったら彼女のようなダンサーのことをいうのでしょうね。(あの、ワジーエフ監督、バレエ団の後進がお手本にすべきロシア・スタイルのバレリーナといったら彼女のような人材のことなんじゃあありませんか?と心中呟いていました 私。<ロパートキナは個性が特異すぎるのよ・・・)。末恐ろしいというか実に頼もしいバレリーナ、今後は見逃さないようにしないと・・・ (相手役は誰だっけ?・・・あ、そうだったサラファーノフね。悪いけど彼のことはぜーんぜん憶えていません。このテリョーシキナ相手では分が悪すぎる・・・その分最後のエチュードでは思いっきり弾けていたけど。)

続いて「パヴロワとチェケッティ」。

音楽は「眠り」から、パノラマと眠りの森のシーンに挟まれた間奏曲(Andante sostenuto)が使われている。夢見がちでメランコリックなヴァイオリン・ソロにのってチェケッティ(コールプ)がパヴロワ(ロパートキナ)にバー・レッスンをつける情景から始まり、ゆったりとした時が流れる至福の8分間。何と言っても感激するのはこの二人の並びの良さ・・・夏にレニングラード・シンフォニーで共演する二人を初めて見たときも感じたのだけど、この二人には音楽に対する並外れた感応力を有する、という共通点があるのです。そしてロパートキナの圧倒的カリスマに拮抗できるコールプの不思議な個性。(彼の背があと5cm高ければこの二人はもっと一緒に踊れるのに!と地団太踏む私・・・)チャイコフスキーの美しいスコアを具現化したようなロパートキナの清らかな舞姿を見ていたら、なにやら自分が浄化されたような錯覚に陥り・・・。カーテン・コールがまた感動的でしたね。役になりきっているコールプが、重々しくかつ<パヴロワ>の舞に圧倒されたかのような表情で、カーテンの向こう側に消えずにずっとこちら側でバレリーナを待ち受けるシーン。自分のバレリーナを観客に披露したくて堪らない、とでもいうかのような美しいジェスチャーに感動しました。

その他の演目については駆け足で・・・

ドウソンの「レヴェランス」は・・・駄作ではないかしら これ。ここで起用されているダンサーにも納得できず・・・パヴレンコセーリナはこの種の<偽フォーサイスとでも呼びたくなる>振付に特別適性のあるダンサーとはあまり思えないのだけど・・・。もっと彼女達の良さを魅せることができる演目が他にあったでしょうに。唯一水を得た魚のように生き生きしていたのはアレクサンドル・セルゲーエフ。スレンダーでしなやかな肢体の持ち主で、この種の柔軟性とダイナミックさを要求される動きが本当に似合っている・・・彼はこの夏の「黄金時代」で主役に抜擢されたのを見ているけど、この時もネオクラシックの振付を踊らせたらすごかったのよね・・・

「タリスマン」「R&J]「チャイコフスキーpdd」「エチュード」に登場した女性陣は少し前からバレエ団が強力プッシュしている若手ダンサーたち。いずれ劣らぬ美貌と才能の持ち主ではあるけれど、今はまだ若さゆえの粗さが目立って特筆したくなるダンサーはいなかった(今回はコール・ドの女性陣にも同じ感想を持ってしまった・・・多分ボリショイと比べてしまってるのだけど、かつてのような一糸乱れぬ美しいマリインスキーのコール・ドはもう見られないのだろうか・・・)。

男性陣は・・・入団3年目のシクリャローフ君には二演目登場はちょっと荷が重すぎたのではないかしら。(確かに紅顔の美青年で可愛いけど、R&Jの相手役イリーナ・ゴールブは真剣に怒っていたように見えたぞ・・・)プリンシパルのファジェーエフ、サラファーノフはやはり安定していましたね。特にサラファーノフはエチュードでは面目躍如の大活躍。その「エチュード」は超絶技巧満載で打ち上げ花火的派手さはあるものの祭り的祝祭感には欠ける、私的には退屈な作品なのだけど・・・観客のウケはすごく良かったですね。

えーそして最後に、忘れてはいけないヴィシニョーワ。このガラでは彼女の「瀕死の白鳥」(珍しい!)を見られると期待していたのだけど、蓋を開けてみればローズ・アダージョ。ポワントシューズの踵が脱げてしまうというアクシデントにもめげず、最後まで表情一つ変えずに踊り通したのは立派。彼女はここのところ表情が柔らかくなって一層美しさに磨きがかかった・・・と感じていたのだけど、この夜は特別綺麗に見えました。これはひょっとして、日本の観客との信頼関係のせいかも?なんてふと思ったりして。この国の観客に愛されている、という安心感から自分を素直に出すことができて、その結果があの艶やかな舞姿だったのでは・・・なんて、夢想したりしていました。

☆レニングラード・シンフォニーの感想はこちら↓
http://londonballet.blog60.fc2.com/blog-entry-15.html

☆黄金時代の感想はこちら↓
http://londonballet.blog60.fc2.com/blog-entry-34.html
2006-12-09 05:10 | マリインスキー・バレエ | Comment(0)
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